ヒロインは絶対に私じゃない(確信)【ヒロアカ】 (ページ21)

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第19話ページ21

無駄に長い校舎前を進み、駅に向かう最中。
私は、耐えきれない沈黙にいつ終止符を打つか策を練っていた。

ていうかなんで私はこの人と一緒に帰っているんだ。まるでアベックみたいじゃないか。
……いやどちらかというと誘拐犯と人質？

爆豪くんの悪く目立ってしまうその威風堂々たる歩き方で、周りからの視線がすごい集まる。ものすごく。
私にも流れ弾が当たっている。もう穴だらけで重傷だよ。

このまま何も話さないで穏便に帰ろう、そう思った矢先に彼は口を開いた。

「お前なんで雄英に来たんだよ」

『え?』

急な質問を聞き取れず、私は返答できなかった。

「んだから!! なんでお前みたいなアホポンコツが雄英に来れたんだって聞いてんだ!!」

間髪入れずに獅子のような顔でキレ散らかす彼。
今、ソフトだったけど暴言をさらりと混ぜてたよね君。

『……なんでって、そりゃあ普通に試験を受けて合格して入ったに決まってるじゃん』

少し気疲れした私に、苛立ちを隠せない彼は言葉にぶつけた。

「……どいつもこいつも、クソナードが……ッ!」

『……緑谷くんは私と違うよ』

“どいつも”とは、おおかた彼のことだろう。
そう一言言うと、爆豪くんは石のように固まった。

『緑谷くんは“無個性”だったけど、今のあの子にはすごい力があった。あれは、確かに“個性”だった。……誰にも負けないくらい努力した証拠だよ。爆豪くんもわかっ、____』

私の言葉は最後まで言わせもらえなかった。
彼が血走った目で、私に手のひらを向けてきたから。
その表情は苛立ちのような、または焦りのような。

「デクのことを俺の前で言うんじゃねぇ」

『……ごめん……あーそうだった……」

人の神経を逆撫でするなんて、我ながららしくもない。
余計なことはしない主義なのに。

・

一度歩みを止めた後は両者無言で帰路に向かった。
電車の中でも、彼は出入口に凭れ、私はつり革に掴まるものの、どちらも口を開かない。
帰り道が一緒とは、なんと居心地の悪いものか。

私の自宅が近づいていく中、爆豪くんは未だ顔を下げてついてくる。
彼の家はもう通り過ぎているはずだ。
意を決して話しかけた。

『……爆豪くん、家あっちじゃないっけ？』

反対を指して私は歩みを止めた。
前を少し歩いていた彼は立ち止まる。

私たちはちょうど向かい合う形となった。
何も言わない、言えない、この空気。

私は何も言わずに遠くを眺めていた。
何か話してくれないかな、と。