第18話 ページ20
「A、あの轟ってやつと知り合い？」
謎のイケメンくん(轟くん)とよろしく挨拶した後、少し後ろにいた響香が好奇心旺盛に聞いてきた。
「もしや、運命の再会〜？」
『なに言ってるの？』
にやけ顔で小突いてくる響香はずっと「これは神様のイタズラ？」「高校生になって再び動き始める恋の歯車」などと少女漫画の帯の宣伝みたいなことを言ってきた。やめて。
意外に彼女はこの手の話が好みらしい。聞き役専門で自分は語らないタイプだ。今日会ったばかりで申し訳ないが、これはウザイ。
私は歩く速度を速めて彼女を置いていった。
『さっさと着替えて教室いこー』
「Aのスルースキル初日から高い！」
響香の方こそ会って一日の奴とは思えないよ(褒めてる)。
・
教室に戻ってからは早かった。
書類に目を通して明日からのことを伝えられればもう今日は終了。帰っていいぞ、と言われて一段落する。
『疲れた……』
ふぅ、と一息吐こうとした刹那、机に大きな音を立てて手のひらが降ろされる。
わずかに硝煙の香りがして、思わず顔を上げた。
「____忘れて、ねえよな？」
目の前にそびえる人物に、ひゅ、と小さく空気を吸い込む。
そこには、有無を言わせないほど悪い人相をした彼がいた。ほんとキミ、悪役向いてるよ。
『……も、もちろん……ハハ、』
「行くぞ」
『えっあっ、待っ』
「はよしろクソが!!」
荷物を急いでまとめてリュックを背負うと、爆豪くんは大股で歩き出した。
はっや。コイツ……本当に人に合わせることを知らないな。
『……自分勝手かよ』
聞こえないくらいの声量で呟くくらいは許してほしい。
一言愚痴を吐いた後、私は彼を追いかけた。
黙ってそのまま後ろをついて歩けば正面玄関まで来て、なぜか彼は普通に外へ出ようとしている。
『ん？ あ、あの……どこに行って……』
「は？ 帰るに決まってんだろ」
『え』
「帰る方向が一緒なんだから仕方ねぇだろうが!!」
『スイマセン!!』
反射的に出た言葉。いやなんで謝ったんだ。
私にはプライドもクソもないみたいなので、将来はリーマンが向いてるかもしれない。
爆豪くんはそのまま舌打ちをして前を進んでいく。
完全に誘拐された子供の気分だった。
怖すぎもうやだ帰りたい。
前にも同じようなことがあったような。デジャヴ……(第7話参照)。
新しい学校での、慣れない帰り道。
彼とこうして学校からの帰り道を一緒にするのは、実に小学生以来だった。
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作者名：ペトリコール | 作成日時：2016年6月1日 23時
