第12話 ページ14
「まずは自分の最大限を知る。それがヒーローの素地を形成する合理的手段」
「なにこれ！ 面白そう！」
「……面白そう、か。ヒーローになるための３年間、そんな腹づもりで過ごす気でいるのかい？」
担任の含みのある言葉に、周りの表情が一気に曇った。
本当にこの人いい性格してると思う。
「よし、8種目トータル成績最下位の者は見込みなしと判断し除籍処分としよう」
「はああ!?」と生徒からはブーイングが飛び交う。
なに言ってんだこの教師ふざけんな。
最下位とかどう考えても私だろ。この人わかってて言ってんのか？
「生徒の如何は俺たちの自由。ようこそ、これが雄英高校ヒーロー科だ」
『だからって……』
「そうですよ！ 理不尽すぎる！」
いくら自由を売りにしてるからって、そんな勝手が本当に許されるのだろうか。
これでは入学した意味がまるでない。
「これから３年間雄英は全力で君たちに苦難を与え続ける。更に向こうへ___Plus Ultraさ。全力で乗り越えてこい」
プレゼント・マイクも使っていた。雄英の校訓みたいなものらしい。
緑谷くんを伺えば、青ざめた横顔が目に映った。
心情は察したが、声をかけようにも何を言えばよいか。
人の心配、してる場合じゃないかもな。
・
50メートル走は切島鋭次郎くんとだった。
「ヨロシクな。俺は切島鋭次郎！」
『工藤Aです。こちらこそよろしくね』
髪が目立つから爆豪くんタイプだと思ったけど、全然普通だった。先入観申し訳ない。
そんな挨拶も程々に、位置についてと声が降る。
考えてる暇もなくスタートの合図は鳴った。
なにか、“個性”でできること。
両腕を、後ろに。
『____風力6』
手から強風を起こし、風に巻き上げられた砂塵が広がる。
走りながら追い風を起こせばスピードアップすることができる、というなんとも単純な考えだ。
『わっ』
ただ、風が強すぎると足の回転と合わなくて転びそうになるから、がむしゃらに走るわけにはいかないが。
結果は4秒45。
まぁまぁやれた方だと思う。
遅れて切島くんがゴールした。
「工藤速いな！ “個性”なんなんだ!?」
『私の“個性”は“風”だよ。切島くんは？』
テレパシーは言わなかった。
多分、それでよかった。
「俺は“硬化”！ 地味だしあんまりこーゆうのには使えないんだよな」
『じゃあ“個性”なしでこのタイム？ すごいなー……』
「工藤、切島、さっさと次の行け」
「は、はい！ 行こうぜ」
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作者名：ペトリコール | 作成日時：2016年6月1日 23時
