目が覚めたら、太宰さんの妻ってどゆこと？！

2.太宰夫婦は冷めていた ページ3

私が今こうして目が覚めるまでのことを回想してみると、なんとも辛く悲しい現実がありました。

お付き合いさせていただいて、結婚を一年経つ迄私は溺愛というものをされていました。前世のことを思い出して猶更客観的にそう感じます。

外は危険だからと中々外出を控えるように言われていましたし、紙で手を切った程度で与謝野先生にみてもらおうと泣きそうな顔で大騒ぎ、どこのバカップルなのかというほどのあまあまな態度。
あの太宰さんが自 殺もせず、女性を心中に誘うこともなかったのです。

だというのに、一年経つ頃突然態度が変わってしまいました。

自 殺をするようになり、女性をみかければ心中に誘う。そればかりか、私に対して冷たく当たるようになりました。

その日も、身支度を手伝おうとすると「私に触らないでくれたまえ」と伸ばした手をぴしゃりとはねのけられ、栄養バランスよく好物ばかりで作った朝食にも一瞥もくれずに太宰さんは出社していきました。

ちなみにこれは毎日のことで、あろうことか以前の私はそれでも太宰さんのことを愛し、尽くしていたのです。

何度も泣きはらしても、以前の私は何かわけがるのだと、めげずに頑張っていたのです。

なんて、健気(可哀そう)な人でしょう。

今の私には到底できることではありません。むしろ悲しさを通り越して怒りを覚えます。

私が前世の記憶を思い出したあの日、私は買い物をしている時に見てしまった。

太宰さんが美人な女性を口説き心中に誘う姿を。

今の私は文ストファンだったこともあり見慣れた光景ではあったけれど、溺愛され今までそんな姿を見たことのなかった以前の私にショックを与えて、今までため込んできたものが溢れ心を壊すには事足りるものでした。

実際に以前の私はショックのあまり、その場から逃げ出してしまいました。

そして逃げた先が悪かった。

赤信号に変わっていることに気づかなかった私は、トラックにはねられ、一度死んだはずなのですが……。


「傷が一つもない、なんで……？」

探偵社の医務室だろう静寂が包む空気に、私の呟きは呑まれて消えました。

３．妻、決意する→←主人公設定

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