死の目の前で ページ48
〜・〜・〜・〜
「残念だな。
彼は組織の中でもトクベツだったのに」
「・・・何がだ」
監視カメラの映像を見ながら項垂れる男に私はガンを飛ばす。彼の目線をたどると、警備員と激戦を繰り広げるハワードが。
「彼はいい理解者だった。だが裏切った。今は世界で二番目に大きいスパイ組織に────
愚かなことをした。私の率いるこの組織こそが世界一大きく最高な組織だというのに」
「スパイは裏切りが当たり前だ。相手の情報を盗む。相手が感づかないほど至近距離で」
「彼は私に刺激をくれる。タイムスリップしているかのように同じことを繰り返す日々に、彼は安らぎをくれるのさ」
「やっぱり」
「どうした?」
「血なまぐさいと思った。お前にとっての刺激は人を拷問した上殺ることなのか?」
「ああ、彼が送り込んでくれる最高のマネキンたちだよ。私の意のままに動いてくれる。彼らにチップを埋め込んでね───
君に埋め込んだのは最初の被害者のものだ」
「マトモじゃない」
「私の耳は少々特殊でね。鼓膜に入るものすべてがひっくり返って聞こえるんだ」
「褒めてないぞ」
「マトモじゃないのは、どうやら君のプラスチックらしいね」
奴に顎を抑えられ、強引に映像を見せられる。
まるで羽が生えたかのように軽やかな動きで、フーリッシュは敵を次々と倒していっていた。
「物語の結末を聞きたい?」
「・・・」
私はその言葉の意味が理解できず、奴をじっと見つめる。
「勇敢なプラスチック王子は友であり相棒のリル・トバイアスを助けるため、身の危険もかえりみず、彼を助けようとするが───
それは失敗に終わり、リル・トバイアスは私のマネキンコレクションに加わる」
"ハッピーエンドだろう?"
そう補足したあと、男はその場を離れ、足元にあったスイッチを押した。
すると、何の変哲もなかった壁が一瞬にして針壁に変わり、私に迫ってくる。
「!!」
抵抗しようにも、麻痺のせいで体が動かない。
これが絶体絶命ってやつだ。
「フーリッシュ、君の命はいくつでもあるんだってね?私には分かるよ」
《彼はどこだ》
「君の目の前にあるそのドアさ。地味で目につかなかっただろう」
《彼に傷を?》
「あと二分後に見るも耐えない姿になってしまうだろうね。君が来るなら話は別だが」
フーリッシュはそのまま誘導された扉に走っていってしまった。
だんだん針壁が迫ってくる。ああ、何度も死に直面しているというのに、怖いんだ。
嫌だ、死にたくない・・・死にたくない!!
「フーリッシュ・・・!」
5人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロユリ☆★(プロフ) - ここりどらすさん» わあ、嬉しいです!ありがとうございます(^^*) (2019年8月23日 1時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - 好きです。8点入れさせていただきました。 (2019年8月22日 23時) (レス) id: af90c931db (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - ぐうたら猫さん» ご報告ありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年2月8日 18時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ぐうたら猫(プロフ) - こんばんは。誤字があったので、ご報告します。『彼の感情』の後半、機械が機会になってました。修正と更新、頑張って下さい! (2019年2月8日 17時) (携帯から) (レス) id: e6816c78e0 (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - 夜桜さん» わかりました!拝見させていただきますね! (2018年8月14日 19時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:クロユリ☆★ | 作成日時:2018年7月25日 13時