紳士たちの控え室 ページ30
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フーリッシュはピストル、私は葉巻を手に取り、手の中のそれをまじまじと見つめた。
「ピストルは良いとして、葉巻はいったいなんの役に立つんだ?
任務中に煙振りまくやつはいないだろ」
私は眉をしかめながらその葉巻を口にくわえてみた。特に何も起こらない。やはり武器ではないのか?
「まさか。これもれっきとした武器だよ。ほら、見てごらん。
このライターで火をともすと───」
鼻にこもったような笑い声を混じえて言った彼は、私のくわえた葉巻に火をつけた。
いつも吸うものとは違う。苦くて、糸が絡み合うような複雑な味。これがいつもハワードの味わっている感覚なのか?
私はそう思いながら、少々むせ込み混じりで懸命にそれを吸っていた。
だがしばらくすると、心臓の音がうるさいくらいにドクンと跳ね上がり、むせるどころか息すらできなくなってくる。
「っ・・・」
「警部?」
フーリッシュはそれに気がついたのか、地面にヘナヘナと頼りなく沈んでゆく私の肩を抱き、LEDを黄色く点滅させながらハワードを見た。
「彼に何を?」
「ああ、大丈夫。多少吸っただけなら平気さ。この葉巻とライターには特殊な化学物質が入っていてね。
葉巻にライターの火をつけると起こる化学変化を利用しているんだ」
"ターゲットから信頼を得たあとに使いやすい武器さ"彼は左の口端だけを上げる。
彼は微笑んでいるつもりだろうが、はたから見れば「目が笑ってない状態」だ。
「本当に・・・何も無いんだな・・・?」
私は必死に酸素を取り入れ、とぎれとぎれの声で確認の言葉をこぼした。
「ああ、もちろん。2、3分安静にしてればなおるよ。君が元気になった頃にはジャストで目的地に着くだろうね。
ああ、後このスーツだが───」
今度は壁にかけられた、黒と白のスーツを手に取り、フーリッシュに見せた。
そのスーツはとても上質で、傷ついにくい品質だと見て取れる。するとハワードは、服を裏返し、そこにあった袋を開け始める。
「これはオーダーメイドのコートだ。君は自ら作動させない限り温度感覚の機能がないと聞いてたからね。暑くはないだろう。
おしゃれなオマケを付けておいた」
そのコートも、主には白黒で統一されていた。
いい具合に立ったえりの頭には、青の反射板のような素材で作られたラインが入っていて───
フーリッシュらしい、クールで、何ものにも染まらないまっすぐな彼を表したような良いコートだ。
と、私は心の中で頷いた。
「君は試着を。さあ、次は君だよリル」
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クロユリ☆★(プロフ) - ここりどらすさん» わあ、嬉しいです!ありがとうございます(^^*) (2019年8月23日 1時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - 好きです。8点入れさせていただきました。 (2019年8月22日 23時) (レス) id: af90c931db (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - ぐうたら猫さん» ご報告ありがとうございます!これからも頑張ります! (2019年2月8日 18時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ぐうたら猫(プロフ) - こんばんは。誤字があったので、ご報告します。『彼の感情』の後半、機械が機会になってました。修正と更新、頑張って下さい! (2019年2月8日 17時) (携帯から) (レス) id: e6816c78e0 (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - 夜桜さん» わかりました!拝見させていただきますね! (2018年8月14日 19時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:クロユリ☆★ | 作成日時:2018年7月25日 13時