あなたがマッド？ ページ26
〜・〜・〜・〜
フーリッシュの言葉にその場が凍りついた。誰も動かない。ふとアンティークの店主に目をやると、彼はさっきと違う笑顔を浮かべていた。
「おやおや、どうやって見つけたんだい？」
「メモの裏に透明なインクで書かれた地図が。僕のシステムで読み解いた」
私は呆気に取られて、ただ彼らのやりとりを2人に挟まれながら見ているしかなかった。
「でもなぜあなたはわざわざメモの裏に透明な地図を書いたんです？
普通に書けば、あの女性にあなたの居場所が分かったでしょう」
私が問うと、彼はメガネを外して、優しげな青色のタレ目で見つめてきた。
「彼女はとても心配屋だからね。出来るだけ彼女に精神的負担を与えたくなかった───
そして心配性な彼女はいずれ警察や誰かに相談するだろう」
「つまり・・・我々が来るのを待っていたってことですか？」
「その通り」
彼はメガネを木の実や、松ぼっくりで飾られたメガネケースにしまって、カウンターを出、私たちに歩み寄ってくる。
宝石のようなオーシャンブルーアイにまっすぐに見つめられ、身動きが取れなくなってしまう。
「君たちがいい警察官で良かった。マスコミの目ばかりを気にする連中には、この事は話せないからね。
これだけは一か八かの賭けだったよ」
また、あの柔らかな笑顔に戻った。でも、さっき見せた、あの雰囲気の違う笑みは何だったのだろう。
私は疑問を抱きながら彼をポーッと見ていると、今度はフーリッシュが質問をした。
「この事、とは？」
「黙っていてくれるかい？」
「もちろん」
フーリッシュがそう言うと、彼はカウンター奥にある鏡に手を押し付けた。
すると、鏡にはくっきりと彼の手あとが残り、その鏡は回転して壁の内側に回っていってしまった。
次に現れたのは、番号を打ち込むことが出来る電卓のようなものだ。
彼はそこに"2036"と打ち込む。
すると───
壁ごとゴゴゴゴと回転し、その先には、全体的に赤や金で埋まっていて、ゴージャスな部屋が立ちはだかっていた。
「ああ失敬、申し遅れたね。
私はハワード・ボスウェル。
"マッド"だ」
心臓の音で後ろの扉が閉まる音がほとんどと言っていいほど聞こえなくなった。
自慢げに、ピカピカに磨かれたピストルを構える彼の名を知ったとたん、私の足が驚くほどに震え始める。
名とはいえ、本名の方ではない。
「あなたが、マッド？」
「ああ、覚えていてくれたのかい？
リル」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 5人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
クロユリ☆★(プロフ) - ここりどらすさん» わあ、嬉しいです！ありがとうございます(^^*) (2019年8月23日 1時) (
レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - 好きです。8点入れさせていただきました。 (2019年8月22日 23時) (レス) id: af90c931db (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - ぐうたら猫さん» ご報告ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2019年2月8日 18時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ぐうたら猫(プロフ) - こんばんは。誤字があったので、ご報告します。『彼の感情』の後半、機械が機会になってました。修正と更新、頑張って下さい！ (2019年2月8日 17時) (携帯から) (レス) id: e6816c78e0 (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - 夜桜さん» わかりました！拝見させていただきますね！ (2018年8月14日 19時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：クロユリ☆★ | 作成日時：2018年7月25日 13時
