不器用な笑顔 ページ23
〜・〜・〜・〜
飛行機を降り、荷物を受け取りに空港の中へ向かう。いま私は48歳だが、こんなに最先端の空港は初めてだ。
内装は至ってシンプル。無駄な飾りは一切ない。
各便の受付にはアンドロイドと人間が交互に配置されていて『時代も変わったものだ』と、ため息をつく。
「酔ったのなら薬を」
「いいや、すこし思いに浸ってただけだ。俺の生まれた時代はこんなアンドロイドだらけじゃなかったから───」
「慣れない？」
「ああ」
「僕と暮らしているうちに慣れる」
「そうだといいんだが・・・」
苦笑いをこぼす私に、フーリッシュは表情一つ変えず───いいや、すこし口端を上げていた気がする。
私の願望が見せた幻でなれければ。
「なあ、君めったに笑わないよな。どうしてだ？笑うと気分がいいぞ」
「僕には必要ない。笑って何になる？」
「ストレス解消、周りとのコミュニケーションも取れるし、いい印象を与えられる」
「僕のプログラムには"笑う"という行動は埋め込まれていない」
「まあまあ、そんなこと言わずに、一回笑ってみてくれよ。
君の笑顔がどんなものなのか見てみたい」
彼は一瞬考えるようにまばたきすると、不器用に笑って見せた。その真っ白な歯が引きつった唇からのぞく。
驚くほど胡散臭い笑顔にこっちまで顔がひきつるが、彼らしい笑を見れて私は満足していた。
「あはは、やれば出来るじゃないか。なかなかいい笑顔だ」
「そうか？なら職場の同僚にこの笑顔を見せて警部と同じ反応をするか試してみよう」
「・・・それはちょっとやめた方がいいと思う」
「ふふっ、冗談だ」
細められたターコイズブルーの瞳。柔らかく微笑む口元。だがやっぱり不器用で穏やかな表情。
無論、本物の笑顔に近い笑顔だった。
こんな笑顔を見せられたら署の女子たちは黄色い声を上げてやめないだろう。
私は目に見えている署の騒がしい光景を想像し、また苦笑いをしては、彼の背中をポンと叩いた。
「ははっ、それを職場の女性に見せちゃダメだぞ。
家までついてこられちゃ困るからな」
「それ、とは？」
「気にするな、独り言だ。ほら、早く荷物を取りに行かないと誰かに盗まれる」
「そうはさせない」
そう言うとフーリッシュは笑えるほど堪えた不自然な歩き方で荷物を取りに行く。私はそれに大声を出して笑いながらついていった。
空港を出ると、ロンドンとはまた違った空気のフランスの光景が広がっていた。
「仕事が終わったら観光しよう、行きたいところがある」
「どうぞお好きに」
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クロユリ☆★(プロフ) - ここりどらすさん» わあ、嬉しいです！ありがとうございます(^^*) (2019年8月23日 1時) (
レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ここりどらす(プロフ) - 好きです。8点入れさせていただきました。 (2019年8月22日 23時) (レス) id: af90c931db (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - ぐうたら猫さん» ご報告ありがとうございます！これからも頑張ります！ (2019年2月8日 18時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
ぐうたら猫(プロフ) - こんばんは。誤字があったので、ご報告します。『彼の感情』の後半、機械が機会になってました。修正と更新、頑張って下さい！ (2019年2月8日 17時) (携帯から) (レス) id: e6816c78e0 (このIDを非表示/違反報告)
クロユリ☆★(プロフ) - 夜桜さん» わかりました！拝見させていただきますね！ (2018年8月14日 19時) (レス) id: 0bca962c48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：クロユリ☆★ | 作成日時：2018年7月25日 13時
