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戦闘というのは、恐ろしいものだ。いくら強化された肉体を持っていて、アイコンから魔法や剣技を駆使できるとはいえ、モンスターと対峙するのは恐怖を伴う。
大地を踏みしめる両脚も、薙刀を振るう両手も、自分自身のものなのだ。頬を撫でる風も、耳障りな怪物どものうなり声も、血管を駆けめぐるアドレナリンも、私自身のものなのだ。突然目の前に突き出されるかぎ爪や牙、襲いかかってくる炎や酸のかたまり。それらをかわし、あるいは受け止めるのは、想像以上に大変だ。
私は幸いにも、リアルで武術の心得があり、〈エルダー・テイル〉をもうひとつの現実としてプレイしていてそこまでの抵抗感はないが、根っからのインドア派にはきついと思う。
それらを乗り越えるためには、場数しかないだろう、というのが6人の出した結論だった。
「右っ!」
「あいよっ」
険しい顔をしながらも、シロエの警告方向をすばやく確認して、先輩は右手に構えた長剣(ロングソード)を叩きつけた。その一撃は命中はしないものの、〈棘茨イタチ〉への牽制になったようだ。
緑の棘を突き出したイタチは、真っ赤に染まった瞳でにらみつけながら、2回、3回とボールのようにうなって距離を取った。
この攻撃もそうだった。
私たちは90レベルの〈冒険者〉だ。本来であれば、こんな48レベル程度のモンスター相手に「攻撃失敗」することなど、あり得ない。
こんな所にも、訓練の不足がみてとれる。
体が90レベルの〈冒険者〉であっても、今はその能力を満足に使いこなせないのだ。
「〈ナイトメアスフィア〉っ!」
いまのは〈付与術師〉の範囲魔法だ。
とはいえ、そのダメージは少ない。しかし、移動速度低下のバッドステータスを、複数の敵に与える。
「流石…♪」
私は薙刀を弓に変えながら呟いた。師範とパーティを組むと戦闘速度の度合いが違う。
「お!これ、狙いやすいなっ!」
「感謝するぞ、主君!」
「ありがとっ」
「ありがとうございます!」

4人の明るい声が響く。6人が今相手にしている敵は、〈人喰い草〉と〈棘茨イタチ〉である。見た目は非常にグロテスクだったり威圧的だが、どちらもそのサイズは1メートル前後にすぎない。
攻撃のリーチでいえば、剣や刀を持った直継たちの方が圧倒的に有利だ。
その移動速度が鈍ったのならば、あとは恐れず接近して、攻撃を命中させるだけである。

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ヒトナ(プロフ) - あん子さん» ありがとうございます!暇な時間を見つけて、一刻も早く更新できるように頑張ります。 (2015年8月21日 1時) (レス) id: 5ceff24628 (このIDを非表示/違反報告)
あん子 - 面白かったです!更新頑張ってください。 (2015年8月21日 0時) (レス) id: 432de05c10 (このIDを非表示/違反報告)
ヒトナ(プロフ) - 水妖精さん» 水妖精さん、コメントありがとうございます!ようやく返信方法がわかったので返信させていただきます。面白いと思っていただいて光栄です。毎日とは行きませんが、一番更新を進めたい小説ですし、頑張ります! (2015年5月9日 0時) (レス) id: 5ceff24628 (このIDを非表示/違反報告)
ヒトナ(プロフ) - ありがとうございます!返信の仕方がわかり次第、ちゃんと返信させていただきます (2015年5月7日 22時) (レス) id: 5ceff24628 (このIDを非表示/違反報告)
水妖精 - 面白いですー。更新がんばってくださーい♪ (2015年5月7日 21時) (レス) id: 4ed4b034ec (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ヒトナ | 作成日時:2015年4月25日 9時

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