泥の上で踊る

屋上(縁視点) ページ2

うちの中学は、珍しく生徒も屋上に入ることが出来る。
三階建ての校舎のてっぺんから眺める街やそれを囲む山々の景色はかなり綺麗で、少し前までは学校一の人気スポットだった。
しかし、それは今年の六月までの事だ。
今は生徒はおろか、教師まで屋上には近付かない。

むしろ何故立ち入り禁止にならないのか不思議なくらいだ。

だが、私にとってはその方が有難い。

この景色を独り占め、とはかなり贅沢な事だし、読書には最適な場所だ。

私は数メートルの高さを持つフェンスにもたれ掛かる。

今年の六月、ここで男子生徒が死んだ。
いじめを苦にし、唯一の家族だった姉に先立たれ、後追いをしたらしい。

私はフェンスに足をかけた。
そのまま腕の力で登り始める。

網目が細かい為、何度もずり落ちそうになる。

少し登った後、眼下の景色を見やる。

高い。

足が震える。

顔がひきつるのがわかる。

手が汗で濡れたと同時に、

「あ……」

落ちた。

屋上の床に。

「……いったぁぁい……」

尻を摩る。
私は、またやりそこねた。

私は、

しにたい。

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