春色列車。２

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「ヤス、昔はバンドやっててんやろ？
解散したから、こっち戻って来たん？」


何気なく聞いたら、
ヤスの顔色が、少し曇ったような・・・。

聞いたらあかん質問やったんかな。


「私も気になってた。
章ちゃん、バンドのみんな、
今どうしてるの？」


けど、Aちゃんが、
さらに突っ込んで聞いてもうてさ。


ヤス、苦笑いした。


「みんな、どうしてんねやろな。
今は消息不明やな。
連絡もないし」


「なんで？
あんなに仲良かったのに」


「Aも覚えてる？
ボーカルの淳人んこと」


「うん。覚えてるよ。
面倒見の良い、お兄さんでしょ」


「そう。
淳人に急に解散しよ、言われてん。
俺ら、知らされてなかってんけど、
そん時にはもう、
淳人一人で、
大手のレーベルからデビュー決まっとってんて。
一緒に作った、『華の道』って曲あるねんけど。
そのすぐ後、
その曲でメジャーデビューしてな。
無断で、あいつ一人で書いたことになってた。
なんか、必死で積み上げてきたもん、
全部壊された気がして、
バンドのみんなも、
しばらく人間不信なってもうて。
音楽やめる言い出すし。
そんで、俺はこっちに戻って来た」


ヤスは、
焼きあがったお好み焼き、
へらで切りつつ、

いつもの緩い感じで言うてるけど、
それって、ものすごい裏切りちゃうん。


「ひどいよ、淳人さん。
男気ある筋の通った人に見えてたのに」


Aちゃんも怒ってて、
チューハイ持つ手が、ぷるぷる震えてる。


「まあ、色々考えるとこ、
あったんちゃう？
淳人の、俺に対しての感情が、
負になってってんの、感じてたし。
バンドの他の二人、
俺らのねじれた関係性に巻き込んでもうて、
悪かったと思う」


ほんまは、色々複雑な思いがあるはずやのに、
ヤスは、相変わらずの、何でもない口調やねん。


「その人が、ヤスの書いた曲、
勝手に自分のものにしたってことやんな？」


あかん、俺がめっちゃ腹立ってきた。


「いや、共作やけど」


「どっちでも一緒やん。
最低やな、そいつ」


見たこともないヤツやけど、
許されへん。

やのに、ヤスは、


「まあ、もう済んだことや。
淳人は、数年で契約切られたらしいて。
その後は噂にも聞かんし、
今はどうしてるんか、分からへんから。
ちょっと心配やねんな」

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