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「………あのね 大我」
「ん?どうしたの」

少しの沈黙が開けて、
君は、ゆっくりゆっくり 話し始めた。

「考えてみたの。
このまま病棟移って、あと一ヶ月、何して過ごすのかなって。
まだ今みたいに 痛みが少ない間は、本を読んだり きっと音楽を聴いたりしてると思うんだけど。」

でもね、と君。

「俺が残りの時間でしたいのは、
そんなことじゃない気がするの。」

それは思いがけない、
だけど北斗らしい気もする話だった。

「俺の25年間一番の出来事がさ、癌になったことって、すごく悔しいんだよ」
「一番じゃないよ、」
「ううん。色々昔のこと思い出してみたんだけど これ、って言えることがなくて。大して友達もいないし、青春したな〜って記憶もないし。

何よりさ、」


確かに北斗から、華やかな思い出話を聞くことは殆どなかった。まぁ 俺と君は少し似ているところがあるから。似た者同士、運命の出会いだね。


「大我と まだなんにも出来てない」
「…なにも?」
「考えてみてよ、俺達 どこか遊びに出掛けた?
せいぜい近所のショッピングモールとか。映画だって、あの日以来行ってないよ」
「うん、そうだね」

病院を行き来して君に会いに行っている期間の方が、ずっとずっと長いのだった。


「……俺ね 大我と、どこか遠くへ行きたい」


電話越しの君の声が、静かな夜に響く。


「俺の人生のね、
一番の思い出は、大我がいいの。」
「ほくと…」


その時 薄暗い寝室で、ふと目に止まったのは、
デスクに置かれた 小さな砂時計。

数年前、何気なく立ち寄ったアンティークショップで、どうしても魅力的に思えて購入したもの。ブロンズのボディと、硝子の中の真っ白い砂が気に入っている。中央の括れた部分は、オリフィスと呼ぶんだっけ。

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(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…! 長らくのご愛読、ありがとうございました! (2021年10月5日 19時) (レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年10月21日 20時

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