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繋いでいた手がふわりと揺れて、俺は瞼を開いた。
いつの間にか眠っていたようだった。
「自由に使ってね」と床に敷いてもらった布団が、暗がりの中でぼんやりと浮かび上がる。
「ん、」
今度はその手を握り返されて、俺は視線を移す。
それは紛れもなく、君の力だった。
何故だろう。強くて、確かなものだった。
「…ほくと、北斗」
目を開いていた北斗は、俺の声に反応して笑った。
君の笑顔は不思議だ。心の中が温まっていく。
「へへ…、ほくと」
「…なぁに…って、ば」
「なにって…なんでもないよっ」
あの頃の、北斗の声がした。低くて優しくて、でもちょっぴり高くて若々しい、大好きな声。
「…たぃ、が」
「ん?」
「だき、しめ て…ほし、」
「…っへへ」
この感情は何度襲っても慣れなくて、俺は涙を誤魔化すように笑った。
「もちろん。っ抱きしめて、あげる」
この気持ちは、…透明だ。
全部を貫く、強くて弱い特別な色だ。
君への想いは、目には見えない。
北斗の背中に手を回して、その体を抱きしめる。
「どう…ちゃんと、出来てるかなッ」
「…あった、かい」
「うんっ」
目には見えない気持ちは、肌から肌へ 心から心へ
君の記憶の中に、この気持ちを仕舞い込む。
温もり、匂い、感触。北斗の全てが、俺の心の中にある蝋燭に、ぽっと火を灯した。
その炎が揺らめく度、涙の雫がこぼれ落ちた。
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…! 長らくのご愛読、ありがとうございました! (2021年10月5日 19時) (レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:晴 | 作成日時:2020年10月21日 20時