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夕飯のあと、一人ずつシャワーを浴びた。ベッドの上で、君の髪をタオルドライしてあげる。少し生えた黒い毛が、柔らかかった。体が冷えたらいけないから また帽子を被せてあげると、「ありがとう」と君は笑った。
「今日、どこも痛くなかったんだ」
薬を飲んだあとそう話す君に、俺は心からほっとする。コップに残ったミネラルウォーターをもらって飲み干すと、水が喉を通る感覚が気持ちよかった。
「俺今日さ、あの景色見てる時だけは、自分が癌だってちょっと忘れてたんだよね。そのくらい心を奪われる景色だったし、奪われた俺の心も元気だったってゆうかさ」
「ん…、北斗いいこと言うね？」
「だって、ほんとだもん」
君の言葉選びが、ずっと好き。
生憎、予約した部屋はツインベッドだった。どうしようか、なんて少し迷っていたら 先に横になっていた北斗が俺に向かって両手を広げる。
「こっち。絶対こっち」
「ふふ…そのつもりだった」
「うそだぁ」
部屋の電気を消して、布団に潜り込む。
シングルサイズに大人二人、かなり狭いけれど。君はゆっくり姿勢を変えて、俺の方を向いた。俺も、北斗のいる右側を下にして枕に頭を沈めた。
「…いつぶりだろう、こうやって大我と眠るの」
「ん、…半年ぶりだね」
「そんなになるんだ。
……寂しかったな、病院のベッド」
俺の視界すべて、君で埋め尽くされている。だからか、いつもの何倍も君の表情や声色が伝わってきた。
抗がん剤の副作用で吐き気の酷かった北斗は、夜も眠れない日が殆どだった。面会時間が終わると、そんな君を置いて必ず帰らなければならないことが辛かったし、それ以上に君が辛かったことを知っている。
真夜中掛かってくる電話の向こうの君は、声を殺して泣いていることも少なくなかった。もういやだ、苦しい、痛い、寂しい、会いたい、会いに来て。北斗のそんな叫びに、俺はただ電話口で「大丈夫だよ」と呪文のように唱えることしか出来なかった。
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…！ 長らくのご愛読、ありがとうございました！ (2021年10月5日 19時) (
レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴 | 作成日時：2020年10月21日 20時
