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ガイドブックで目星をつけていたもうひとつの駅は、途中下車せずに通過することにした。やっぱり、車いすと座席の移動は北斗にとって大きな負担だったから。長く旅を続けるには、我慢も大事。君は俺に、そう言った。
「終点だ。降りようか」
「うん、大我 手貸して」
「もちろん」
さっきと同じようにして、君は車いすに移った。
列車を降りると、スロープを片付けながら森本さんはこんなことを話してくれた。
「菜の花の花言葉。『小さな幸せ』なんですよ。
僕すごく好きで。菜の花畑を通る度、車内から色々な声が聞こえてくるんです。子供達の声とか、おじいちゃんおばあちゃんが喜び合う声だったり。
それを聞く度に、僕も幸せを貰うんです」
森本さんは、へへ、と笑う。
「俺、熱く語りすぎですねっ。……お二人にも、この列車を通じて、何かそんなものを感じてもらえていたらな、って思って。」
言葉にはしなかったけれど、君が病気を患っていることを、森本さんは分かっているのだと思う。深く被った帽子や、暖かい季節に似合わない厚着姿、青白い肌が 君の体の傷を物語っていた。
森本さんは、北斗の目線までしゃがんで、君を見つめた。
「また、お待ちしてます。菜の花も、僕も。」
君は少し戸惑って、それから微笑んで頷いた。
「もし来られたら、また森本さんに会えますように」
「へへっ、きっと会えます。」
森本さんの笑顔は、菜の花畑のように眩しくて素敵だった。俺達が改札を出て歩き出す頃、列車は再び逆方向へ動き出す。車掌室から手を振ってくれたから、二人で振り返して さようならをした。
「……いこうか。お宿まではすぐだよ」
「うん、……あ、少し待って」
君はそう言って、改札横のスペースを指さす。
小さな売店だった。
「ポストカード、一枚買おうかな。」
全部で10種類ほどのポストカード。どれも菜の花畑を走る赤い鉄道の、美しい写真が印刷されてある。
君は何枚か手に取って、じっくり頭を悩ませた。
「北斗、俺少し店の中見ていてもいい？」
「うん、いいよ。」
中に入ると、飲み物やちょっとしたお弁当、お菓子が売ってあった。それから、文具も置いてある。有名なキャラクターと菜の花がコラボした、シャープペンシルだろうか。
ふと、カラフルな小瓶が目に留まった。
ラベルには、“金平糖”と書かれてある。
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晴(プロフ) - 名前しずくさん» あとがきまで読んでくださったんですね(^^) 2人はこれからもお互いを想いやっているはずです…！ 長らくのご愛読、ありがとうございました！ (2021年10月5日 19時) (
レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
名前しずく(プロフ) - 金平糖を贈る意味がとっても素敵で、お話にも合っているなあと感じました。今までお疲れ様でした。 (2021年10月4日 9時) (レス) @page44 id: 0ac6e112f4 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴 | 作成日時：2020年10月21日 20時
