◇＿＿義足 jr ページ34
side A
「わっ、またいる」
『は？こっちの台詞。またサボりかよ』
「サボりじゃない、気分転換」
今日は二時間目の授業を抜け出して、
屋上に来た。
彼は、私がいくと大体いる。
知っているのは、名前が田中樹だってことと、
同学年の、隣の隣のクラスだってこと。
「樹くんこそサボりじゃん」
『俺は、…まあ、サボりだな』
「なんでサボるの？」
『答えなきゃならない？Aは話してくれないくせに』
2人で並んで座って、足を伸ばす。
いつまで経っても縮まらない樹くんとの距離を、
もどかしいと感じているのはきっと私だけ。
「話さないっていうか…
自分でもよくわからないの。
けどなんか、教室って酸素が薄くて」
『ふーん』
「ここにくると、深呼吸ができて、楽になれる。」
そう言ったら、樹くんはあっちを向いて、
『俺も、Aといると、楽だよ』
「……えっ」
『えじゃねーよ。なんだよそれ』
だって今……
『屋上でサボるやつなんて、俺くらいだったから。
ある時Aが来て、最初は邪魔されたって思ったけど、』
じゃ、邪魔だったの？！
『ははっ。今はちがうよ。
Aと話してると、楽しい。
昔を、思い出すんだよね』
「むかし？」
『俺中学、バスケ部だったんだ。
一応、キャプテﾊｱｯ……うっ……ぐ……』
やわらかな眼差しで話していた樹くんは、
突然苦しそうに痛がって、左膝を押さえ始めた。
『うっ……ﾊｱ…ﾊｱ……いた、……い……ﾊｱ』
「樹くん？ど、どうしたの？大丈夫？」
『ﾊｱ…ﾊｱ……うぐっ……っ…ﾊｱ…』
必死に押さえつけるように両手で覆って、
汗をびっしょりかいて痛がっている。
何が起こっているのかよくわからないけど、少しでもよくなればと、左膝に手を伸ばしたその時、
『っ、触んな！』
樹くんが叫んだ。
「樹、くん…」
『触んな、触んな帰れ！…ﾊｱ…あっち、いけよ……おね、がい、ﾊｱ…ﾊｱ……』
私は言われたとおり、屋上をあとにした。
ほんの少しだけ、縮まったと思った距離は、
ふりだしどころか、マイナスになったんだね。
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ほくなな - 黒くん義足が見たいです！ (2021年4月5日 20時) (
レス) id: 22683c4ff9 (このIDを非表示/違反報告)
晴(プロフ) - 七瀬モカさん» モカさん、いつもありがとうございます。緑くんのお話、そう言っていただけて大変嬉しいです！ありがとうございます。これからもお付き合いくだされば幸いです！ (2020年4月1日 22時) (レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
晴(プロフ) - Sakun07さん» Sakun07さん、いつもありがとうございます。そう言っていただけて嬉しい限りです。大変励みになります！ゆるゆる更新になりそうですが、お付き合いしてくだされば嬉しいです。 (2020年4月1日 22時) (レス) id: 924db004c7 (このIDを非表示/違反報告)
七瀬モカ(プロフ) - こんにちは、いつも楽しく読ませていただいてます。緑色さんのお話がとても好きです。毎回更新を楽しみにしていますこれからも頑張って下さい！！ (2020年4月1日 14時) (レス) id: 7476f662e4 (このIDを非表示/違反報告)
Sakun07(プロフ) - いつも読ませていただいています。晴さんの小説を読むと、最後はあたたかい気持ちになります。黒くんのお話とても好きです。 今回の黒くんと青くんのお話もとても読み応えがありそうで更新楽しみにしています！私なんかがコメントすみません… 応援しています。 (2020年3月31日 17時) (レス) id: 6e7b6bb8a7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：晴 | 作成日時：2020年3月21日 16時
