3月24日11:32 ページ33
世の中どんな人間が生き易くて、どんな人間が生き難いのか。
どうせ誰もが生き難さを感じながらも必死に生きているのだ。
「なんか、お前ってあれだな。女みてぇな井戸端会議好きだよな」
「別に。こういう仕事してると聞いたり見たりしちまうだけでさぁ」
「あっそぉ、お前も割と難儀な奴だよな」
沖田はその言葉に鼻で笑った。
知りたくないことも知ってしまうのは仕事柄銀時も同じだ。
だから銀時も沖田の気持ちが分かる気がした。
どちらからともなく黙り込んで頼んだ甘味を黙って食べていた。
じりじりと肌に張り付くような暑さに重い溜息が溢れる。
「あちぃ…」
「そりゃあんた、それだけ着込んでりゃ暑いでしょうよ」
「お前に言われたくねぇんだけど」
「俺ぁ、これが仕事着なんでね」
サボってるくせに、そう言って鼻で笑うと今度は沖田が嫌そうな顔で目を逸らした。
パタパタとワイシャツの首元を揺らす辺り、実際のところ暑くて仕方がなかったのだ。
沖田はジャケットを脱いで溜息を吐いた。
「ここのところ、仕事が立て込んでましてねぃ」
「あ、機密情報だろそれ。俺ぁ知らねーかんな」
「顔が広ぇあんたを見込んでのことでさぁ。土方さんも了承済みでぃ」
「聞かねーから」
「ま、情報があればって話なんですけどねぃ」
そう言って沖田は「何かあればここまで」と番号の書かれた紙を銀時の前に置く。
溜息交じりにその紙に目を落とすと沖田のものだと思われる電話番号が書かれていた。
「それじゃあ、俺はまだ寄るところがあるんで」
「仕事しねーのかよ」
「実は今日は午後から非番なんでィ。だからギリギリまでサボってやろうかと思いやしてねィ」
にんまりと笑うその顔はうんざりするほど悪意に満ちていた。
こんな男が働く機関に税金を投入しているのかと思うと今すぐ脱税の一つや二つしてやりたいが、どのみち銀時の払う税金など消費税とおまけのようなレベルでしかない。
せめてもの嫌味で「なに、お前も女に会いに行くのかよ」と笑ってやると、意外にも沖田は否定しなかった。
「まぁ、そんなとこですかねィ」
「え、うそ。まじ?やだやだやだ絶対ェ総一郎くんは独り身貫くタイプだと思ってたのに!!」
「総悟でさァ。あと、会いに行くのは姉ちゃんでィ」
「あぁ……そういう。焦ったわ」
いつの間にか歳下に先を越されたと勘違いして焦った銀時が安心したように肩を落とす。
その様子を見ながらこんな大人にはなりたくねぇな、と思いながら沖田は立ち去った。
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» 心温まるメッセージありがとうございます!私生活との兼ね合いで中々こちらにお邪魔できない状況が続いていますが、えだまめンヌ。様の言葉を励みに頑張っていきたいと思います〜! (2020年6月20日 21時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - ↓「作品だったとは」の後に「…」を入れるの忘れてしまい変な文章になってしまいました。地味に地味ーに誤字っちゃいました笑すみません! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - こんなに色々考えさせられる作品だったとは軽い気持ちで読んだのですが、もう完全にハマっちゃいました。応援しています!!長文失礼致しましたm(_ _)m (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - けれど、ここにきて予期せぬ展開ばかり起こっていて、ん?ん?となんとか自分なりに考察しながら読み進めています笑どんな結末になるんだろう…!?最後に話が1つに繋がってスカッとなる瞬間がくるのを今から待ち焦がれています! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - えええ…。とってもとっても続きが気になります!!初めは本当に「なんじゃこりゃ?」ってなって、あとがきを読んでましろさんにしめしめと一本取られていたとわかったときは少ーし腹が立ちました笑 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2019年5月26日 21時