3月24日11:26 ページ32
サラッと女の名前を口にした沖田に銀時の目が丸くなる。
沖田はそんな銀時の様子を不可解に思いながらも続けた。
「あの店、通りから見えねぇ位置にあるから全然有名じゃねぇんですけど、まぁ、甘味マニアには知れた隠れ家ってやつで。俺も何度か食いに行ったことありまさァ」
「ふーん、そうなの」
「なんでぃ、新しい店でも見つけたって自慢したかった感じですかぃ?そりゃすまねぇことしやしたね」
「べぇっつにぃ〜?そういうのじゃねぇけどぉ〜」
「あぁ、Aさん。素朴な感じですけどよく見ると整ってますよねぃ。旦那はあぁいうのがタイプですかぃ」
「だから何も言ってねぇだろ!!名前聞かなかったからなんて呼べば良いのか分からなかっただけだっての」
新しいおもちゃでも見つけたかのようにニヤニヤと笑う沖田に銀時は「ちげぇから」と念押しのように釘を刺した。
そんな様子を見ると益々茶々を入れたくなるのだが、なんて思いながら沖田は笑う。
「いやでも、なんですかねぃ…旦那が特定の誰かを気にするなんざ珍しいじゃねぇですかぃ」
「うるせーな、別に気にしてねーよ」
「そうですかぃ、俺にはとても気にしてないようには見えやせんけど」
要領を得ない沖田の問いに銀時は目を逸らした。
それ以上、沖田も追求する気はなく何事も無かったかのように再び団子に齧り付く。
じりじりとした暑さにまた汗が滲んだ。
揺れもしない風鈴の姿が目に入って、そういえばあの店はあまり暑くなかったかもしれないと思い出す。
「Aさんって丁度いいですよねぃ」
あ?と銀時が不機嫌そうに顔を向けた先には先程のからかうような素振りなどない沖田の姿があった。
「聞いたことありやせんか?ブスは女扱いされねぇ、美人は人間扱いされねぇって」
「んだそれ」
「ブスが女扱いされねぇってのは言わずもがな、美人になればなるほどセクハラされたり痴漢されたり……だから人間扱いされねぇんでさァ」
「ふーん、難儀だな」
風鈴が揺れた。
まだ春だというのに、こんなものまで吊り下げられるのだから桜と向日葵が同時に拝めるというのも夢では無いのかも知れない。
「その点、Aさんは真ん中って感じがしやす。本当どっちでもねぇ。人間扱いされつつ女扱いもされる。世の中あぁいう女が1番生きやすいんでしょうねぃ」
その言葉は耳を通り抜けて頭には残らなかった。
人の生きやすさなど容易く他人が測れるものでも何でもない。
まして、人の気持ちが見えないのであれば尚更だ。
26人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
月ヶ瀬ましろ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» 心温まるメッセージありがとうございます!私生活との兼ね合いで中々こちらにお邪魔できない状況が続いていますが、えだまめンヌ。様の言葉を励みに頑張っていきたいと思います〜! (2020年6月20日 21時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - ↓「作品だったとは」の後に「…」を入れるの忘れてしまい変な文章になってしまいました。地味に地味ーに誤字っちゃいました笑すみません! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - こんなに色々考えさせられる作品だったとは軽い気持ちで読んだのですが、もう完全にハマっちゃいました。応援しています!!長文失礼致しましたm(_ _)m (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - けれど、ここにきて予期せぬ展開ばかり起こっていて、ん?ん?となんとか自分なりに考察しながら読み進めています笑どんな結末になるんだろう…!?最後に話が1つに繋がってスカッとなる瞬間がくるのを今から待ち焦がれています! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - えええ…。とってもとっても続きが気になります!!初めは本当に「なんじゃこりゃ?」ってなって、あとがきを読んでましろさんにしめしめと一本取られていたとわかったときは少ーし腹が立ちました笑 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2019年5月26日 21時