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3月29日23:31 ページ17

「あん時のAちゃんの顔、今でも忘れらんねーわ」

あの日から数日が経った。
妙に上機嫌な銀時の横で拗ねたようにAがむっと頬を膨らませる。

「ほら、そんな顔してっとブスになんぞ」
「ひどいです、意地悪ばっかり言うんですね」
「悪ぃな、お前見てるとついからかいたくなっちまってな」

他愛ない一日だった。
特筆すべきことなど何もなく、ただ、穏やかな一日になった。
それでも、そこに残るのは物足りなさなどではなく確かな充足感であり、また清々しいまでの晴れやかさだったのだ。
Aがそんな銀時の横顔を見て笑う。

「銀さん、楽しそうですね」
「そうか?」
「はい、そうですよ。私、嬉しいです」

僅かに頬を染めたAが心底嬉しそうに笑った。
その顔をまじまじと見つめる訳にもいかず、銀時は思わず顔を逸らす。
彼女の熱に浮かされたように、銀時の頬も熱くなった。

「あのさ、Aちゃん…」
「はい」
「一目惚れって、信じるか?」

銀時の言葉にAの目が見開かれる。
思わず見上げた銀時の顔は真剣そのものだった。

「まだ会って1週間で、急にこんなこと言うのも何だけどよ……考えてみてくんねぇ?その、俺とのこと……って、何か変な感じだな」
「い、いえ……驚きましたけど、その……良いんですか?本当に」
「おう」

戸惑うように目を泳がせてAが俯いた。
その様子に銀時はフッと笑ってAの頭をくしゃっと撫でる。

「急かさねーし、ゆっくり考えろよ」
「いえ…私も、銀さんと一緒にいるの楽しいですし……その、前向きな検討が出来ると思うんです」
「まじか、意外と即決型なのな」
「ふふ、これからもっと色々なことが意外だって思うかも知れませんよ」

その言葉に銀時もつられたように笑う。
いつの間にかAの住むアパートの前まで来ていたことに気付いて、銀時が「じゃーな」と手を振った。

「銀さん」
「ん?」
「また明日も会いましょうね」
「おー、願ってもねぇ提案だな」

アパートの手すりから身を乗り出したAが嬉しそうに笑う。
名残惜しさを感じながらも今度こそ銀時は帰路へと戻って行った。

夜が更けても賑やかな町を銀時は上機嫌に歩いていた。
町の喧騒はどこまでも銀時の耳に届いてくる。

カチ、カチ、カチ。
不意に聞こえた時計の針のような音に足を止めた。

カチ、カチ、カチ。
規則的なその音が二つ合わさるように響く。

目に入った時計は0時を示していた。

あとがき→←3月27日15:12



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設定タグ:銀魂 , 坂田銀時   
作品ジャンル:恋愛
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月ヶ瀬ましろ(プロフ) - えだまめンヌ。さん» 心温まるメッセージありがとうございます!私生活との兼ね合いで中々こちらにお邪魔できない状況が続いていますが、えだまめンヌ。様の言葉を励みに頑張っていきたいと思います〜! (2020年6月20日 21時) (レス) id: fbcf0daba9 (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - ↓「作品だったとは」の後に「…」を入れるの忘れてしまい変な文章になってしまいました。地味に地味ーに誤字っちゃいました笑すみません! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - こんなに色々考えさせられる作品だったとは軽い気持ちで読んだのですが、もう完全にハマっちゃいました。応援しています!!長文失礼致しましたm(_ _)m (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - けれど、ここにきて予期せぬ展開ばかり起こっていて、ん?ん?となんとか自分なりに考察しながら読み進めています笑どんな結末になるんだろう…!?最後に話が1つに繋がってスカッとなる瞬間がくるのを今から待ち焦がれています! (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)
えだまめンヌ。 - えええ…。とってもとっても続きが気になります!!初めは本当に「なんじゃこりゃ?」ってなって、あとがきを読んでましろさんにしめしめと一本取られていたとわかったときは少ーし腹が立ちました笑 (2020年6月18日 20時) (レス) id: 510c711c3f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:月ヶ瀬ましろ | 作成日時:2019年5月26日 21時

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