＊幻想のような君 ページ23
「A！！」
こんな街中で彼女の名前を大声で呼んだなんて社長に知られたらきっと怒られるだろう。だけどそんな事を気にしてる暇はない。
Aが事務所を辞めるとカヒぬなから聞いたのは今日の午前中の事だった。全ての時間が止まったみたいに頭が真っ白になって、同時に彼女に会いたいと思った。会って直接話しが聞きたいと。
「Aっ、！」
「………ミニョナ？」
小さな公園のブランコに座っていた彼女はどこか小さく見えて、少しだけ頼りなさそうに笑った。
痛々しいその笑みは何を意味しているんだろう。彼女に近づく足が震えているのは気のせいだろうか。
触れてしまえばふわっとどこかへ行ってしまいそうなぐらい彼女の影は儚い。幻想の中じゃないはずなのに、すぐに消えてしまいそうな泡のよう。
「黙って居なくなるなよ。心配した」
「……ごめんね、」
その"ごめん"は何を意味してる？どうしてそんなに悲しそうに笑うんだよ。
今、彼女を創り出している全てが終わりを告げている事に僕は気づきたくないんだ。もう彼女の姿を見られないなんて信じたくない。隣で笑う事も、一緒にダンスを踊る事も。何も信じられない。
何も言わないで。まだ信じたくないから。
「私、もうここには居られない」
真っ直ぐに僕の心臓を射抜く彼女の瞳は揺れていた。いっぱいの涙を溜めた瞳。涙を零さないように大きな見開いて、だけど彼女の声はとても綺麗で、芯が見える。
「…なんで？なにがあったの？」
「、ミニョナ」
問い詰めるように近づいた僕に少しだけ後ずさりをした彼女の手を掴む。小さくて強く握ってしまえば簡単に折れてしまいそうなその手を握れば、彼女はまた苦しそうな顔をした。
どうしてそんな顔をするのに、居なくなろうとするんだ。僕らはまだ一緒に居られるはずなのに、どうして離れようとするんだよ。
「僕はまだAと一緒に居たいし、一緒の舞台に立ちたい。……Aは違う？」
「、ミニョナ…あのね、」
「何？」
繋がっていた手を僕の肩に置いて背伸びをしたAがゆっくりと近づいてきてそのまま唇を重ねた。
時間が止まったようにそこだけが静まりかえって、瞬きすら忘れてしまって、固まったまま動けなかった。
ゆっくり離れたAが俯いたまま「デビュー、おめでとう」と呟いて、そのまま行ってしまった。
小さくなる背中に、僕はまた言えなかった。
今日こそは絶対に伝えようと思ったのに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 256人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
umi - ミニョンとのからみ、最高です！ キュンキュンしながら、読んでいます！！ 更新頑張ってください♪♪♪ (2018年3月29日 21時) (
レス) id: 648b18a84a (このIDを非表示/違反報告)
しゅあ(プロフ) - すごく面白いです！ミニョンとの絡みとかすごくキュンキュンしながら読んでます！更新頑張ってくださいね！応援してます！ (2018年3月25日 23時) (レス) id: 85e49f0ccb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：モモ x他1人 | 作成日時：2018年1月31日 23時
