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Case.05_1 ページ7

『裕也ってヤキモチ焼いたりしないの?』

久々に帰宅時間が被った。

久々というか、立場上いつも多忙な彼と所詮は雑務が多い私とでは仕事量も雲泥の差…

は言い過ぎだけれど、中々こうして時間が合うことは無い。

互いにわざわざ約束するような性格でもないし。

だから帰路をたどる私は、周りに人がいないのをいいことにそんなことを聞いた。

「なんだ、藪から棒に…」

『いや〜なんとなく?』

別にそういった素振りがないから寂しいとかそういうのではない。

その辺は恋人である前に長い付き合いである彼も重々承知だろう。

ただ、仕事人間でパッと見色恋沙汰とは縁遠そうなこの風.見.裕.也という男が、私という些細な存在で心乱す姿が想像出来なかっただけだ。

「…………………しない、わけではない」

『えっ嘘』

思わず本音が漏れた。じとりという視線を感じながら自分の手で口を塞ぐ。

『…ど、どういう時?』

「言わなきゃダメかそれ」

『うんダメ』

ここまで来たら乗りかかった船だ。恋愛的でなく好奇心的な胸の高鳴りに気持ち身を乗り出す。

ここでなんだかんだ言ってくれる真面目なところが彼の美点である。

「………降谷さんと出会い頭に取っ組み合いしたり」

『全然いいもんじゃないけどね』

「他の男と飲みに行っていたり」

『女友達も一緒だよ?』

「知らないうちに交友関係広げてたり」

『んん、いやまあ、それは…』

「週末同僚の奴らと遊園地に行ったんだろう、それもいい気はしなかった」

『えっ待ってなんで知ってんの』

さすがの私も少し話の雲行きが怪しくなってきたことに気付く。

裕也を見れば先程の恥じらいのある照れの入った視線でなく、どこか苛立ちの含んだ鋭い目付きになっていた。

元々目つきが悪い分、タチが悪い。

「たまたま話しているのを聞いた。いや、いい、わかってる。

その前にお前がオレの予定を聞いてきたのは覚えているし、その週末はちょうど捜査が入っていたから仕方ない。でも、」

そこまで口早に言い、目をそらし俯く。

ああ、違う。彼は私に怒ってるんじゃない。

「お前と過ごす時間が、恋人であるオレが他より少ないのは、堪えるんだ」

悔しいんだ。

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ルカ(プロフ) - Mach es!頑張れ! (2018年8月11日 8時) (レス) id: 723d39c3a6 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 明里香さん» ご報告ありがとうございます…! (2018年7月31日 7時) (レス) id: b4e059d7cb (このIDを非表示/違反報告)
明里香(プロフ) - 3-2話に誤字がありました。「雄也」ではなく、「裕也」です。 (2018年7月27日 17時) (携帯から) (レス) id: 85d4df75a2 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年5月17日 19時

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