巫女様 ページ3
それからしばらくして、ようやくたどりついた村は噂通り夕暮れ前にもかかわらず、薄暗い村だった。
「ここが、夜長村。」
薄暗いこともさることながら、人の気配がほとんどない、不気味な村だ。
炭治郎は拳を握りしめ覚悟を決めてから、足を踏み入れた。
しかし。
「うわぁ!」
村の中央へ向かうと、入り口とは打って変わって賑やかだった。
提灯で照らされた通りには小さな店や家が立ち並び、人々が活気に満ちていて、祭りの時のようだと炭治郎は思った。
「あれ!お客さんかいな。」
「本当だ!こんにちは、お兄ちゃん。」
「こんにちは。」
村の子供に声をかけられ、炭治郎が応じると子供はにこやかに微笑んで「夜長村にようこそ」と言った。
楽しい、嬉しい、そんな匂いで満ちた空間に思わず炭治郎の中で張り詰めていた意識の糸が緩む。
(こんな村に、鬼が出るのか?)
そう疑ってしまうほど、この村からは恐怖や血の匂いがしないのだ。
それでも自分の目的を見失ってはいけない。炭治郎はさっそく聞き込みから始めることにした。
「鬼?出るよ。」
村娘はさも当然といった顔でそう答えた。
「.........。」
思わず言葉に詰まる炭治郎に娘は続けた。
「まあ、常に薄暗い村だからね。鬼も他所よりずっと出るよ。」
「鬼が、怖くないの?」
思わずそう聞くと、娘は少しだけ眉をひそめて言った。
「そりゃ、鬼は怖いよ。けど、この村には巫女様がいるからね。」
そういって娘は微笑んだ。
「巫女、さま?」
「そう。月宮のところの巫女様。」
そう言って娘は北のほうの山を指差した。
「あそこの山の麓にある社の巫女様のこと。巫女様が守ってくれるから、私たちは安心してこの村で暮らせるのよ。」
炭治郎は神社があるという方角へ顔を向けた。
見ると山の麓の方で提灯の明かりに照らされている階段が見えた。
きっとあの先に社があるんだろう。
「ところでお兄さん。宿はもう見つけた?よかったら案内するよ。」
「え?...お、お願いします!」
「はいよ。ついてきて。」
巫女様がいるという神社に後ろ髪引かれながら、炭治郎は宿へと向かった。
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フジッピー(プロフ) - かなとさん» すみません。言われるまで気が付きませんでした。ありがとうございます。 (2019年9月19日 0時) (レス) id: 7e2904e8b4 (このIDを非表示/違反報告)
かなと - オリジナルフラグをお外し下さい。違反だという意識はないんですか? (2019年9月18日 12時) (レス) id: bb9d67c977 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フジッピー | 作成日時:2019年9月18日 12時