花に口づけ【JN】

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『………すみません、』

『大丈夫だよ。いやあ、本当に災難だったね。』


目の前でぐずぐずと鼻をすする、日本人の女の子。



旅行初日に大分酷い目に遭ったようだ。うーん。こんなことがあれば、女の子なら余計不安になるよなあ。



可哀想で、どうにかして力になってあげたくなる。



幸い俺も休暇中で助けになってあげる時間もあるし。とりあえず、携帯を電波に繋いであげることが最優先だろうか。



本当なら、お金をぽいっと渡して、それでホテル泊まって。じゃあね。とこの部屋から彼女のことを出すのが、アイドルの俺にとってはセキュリティとか色んなこと考えて良いのかもしれないけど…。


連絡先も分からない子にお金貸すほど、石油王みたいな思考ではない。お金のことはきちんとすべきだし。…ケチ臭いって？まあなんとでも言えばいいさ。


まあだから、そうなると俺の頭で考えられる解決策は一つだけ。



『Aちゃん、落ち着くまでここにいなよ』
『………………………………えっ？』
『凄い溜めたね。…だって、お財布もないんでしょ？ホテルも分からないなら、ここに居るのが最善じゃないかな』



元々の俺はテヒョンイみたいにフレンドリーではないし、パーソナルスペースも広いから家族とメンバーと、あと気を許した何人かの友人くらいしか家に泊めようなんて考えには至らないんだけど…ちょっとこれは、訳が違うよね。



でも、気になることが一つだけ。



『で、でも、良いんですか？』
『うん、僕は平気だよ。ちょっと家空ける時間もあるだろうし、もしかしたら帰らない日もあるかもしれないけど…』
『だ、だってソクジンさん…』
『ん、僕がどうかした？』


困ったように瞳を揺らす彼女。


言ってもいいのかな、という気持ちを感じ取って、大丈夫だよ、と続く言葉を促す。




『ソクジンさん……アイドル、ですよね？』



俺のたった一つの気になること。



それは、彼女が「俺たち」のことを知っているかどうか、ということだった。

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