▼21 ページ21
『すみません、お願いだから、っ、1人にして…』
追いかけて寝室に入ろうとした俺を拒絶する声に、胸が痛んだ。
ぼーっと、テーブルの上のマグカップにさされた白い花を眺める。
それは、なぜ倒れていた彼女の傍にあったのか。
眠る彼女の首元に、なぜ薄桃色の花があったのか。
昨日、薄桃の花を押し花にするための本を物色していた目に飛び込んできたのは、少し前に読んでいた小説だった。
パラパラとページをめくる度に、徐々に思い出していく内容。そして、後書きに書いてある病名に、釘付けになった。―――花吐き病
もしかして、Aちゃんは。
有り得ないって思っていた話だった。でも、自分の中の疑惑が、どんどんと確信に変わっていく。
引ったくりにあって、不安を感じていたAちゃんは、発作を起こして、白い花を吐いたんじゃないか。
そしてあの薄桃色の花は。
俺に肩を抱き寄せられて真っ赤になった顔を思い出すと、そうなんじゃないかって、思うんだ。
Aちゃんは、俺に恋をしてくれたんじゃないかって。
『……Aちゃん、』
意を決して、もう1度寝室のドアの前に向かうと、その奥から小さくガタン、という音が聞こえてきて。ああ、凄く動揺している、とわかりやすいくらいに伝わってくる。
『っ、ソクジンさん。お願いです』
見ないでください。と言った彼女の声は、震えていた。
『見られたら、私は死ぬんです。だから、最後まで優しいオッパでいてくれるなら…このままなにも考えつかなかったことにして、私とさよならしてください……っ、げほっ』
お願い、と小さな声が扉の向こう側から聞こえて。俺はもう居てもたってもいられなくなった。
この子は、どうして。
勢いよくドアを開けると、部屋の隅で蹲るAちゃんの姿が目に入った。
『っ、オッパ』
『Aちゃん、おばかさんだね』
涙で瞳を濡らしたAちゃんを見て、悲しくなった。
……なんで、死ぬなんて。
俺が君のことを受け入れないなんて、決めつけるんだよ。
あの本の通りなら。花を口に含めばって、書いてあったよね。…でも。
『Aちゃん』
『っ、』
『泣かないで…大丈夫だから』
俺は、花よりもAちゃんに、キスをしたいと思った。
泣いて泣いて、今にも消えてしまいそうなくらい悲しい顔をしたAちゃん。
そっと頬に手を添えて、涙でちょっとだけしょっぱい唇に、俺はそっと口付けをした。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 580人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「BTS」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
るめ(プロフ) - ミロさん» わわ！ミロさん！コメントありがとうございます〜！化石を発掘して頂いて幸せな限りです笑 こちらこそいつも素敵なお話をありがとうございます！コメント嬉しかったです^^* (2020年6月13日 14時) (
レス) id: c680f383ae (このIDを非表示/違反報告)
るめ(プロフ) - あやねさん» お読み頂きありがとうございます！そう言って頂けて幸せです。素敵なコメントをこちらこそありがとうございました！ (2020年6月13日 14時) (レス) id: c680f383ae (このIDを非表示/違反報告)
ミロ(プロフ) - 今更のコメント申し訳ありません。癒しのそくじんさんを探していたらここにたどり着きました。こういうちょっとファンタジー要素のあるお話大好きだなー素敵だなーと思ってたらるめさんでした。さすがです。素敵なお話をありがとうございました。 (2020年4月26日 1時) (レス) id: 5d7ae6ba18 (このIDを非表示/違反報告)
あやね - きゅんきゅんしました！とても素敵な小説で時間も忘れて読んでしまいました。ありがとうございます。お疲れ様でした！ (2019年9月23日 1時) (レス) id: 7d823bc9ce (このIDを非表示/違反報告)
るめ(プロフ) - あがしおんさん» あがしおん様、コメントありがとうございます！大好きな作品の作者様にそう言って頂けて本当に幸せです。いつもお話楽しく拝読させております…！素敵なコメントありがとうございました！ (2019年9月18日 15時) (レス) id: c680f383ae (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：るめ
| 作成日時：2019年9月14日 1時
