My Precious【TH】

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テヒョンさんの腕が私の膝裏に回って、ひょい、と抱き上げられた。咄嗟にテヒョンさんの首に腕を回すと、やさしくやさしく微笑まれる。そのままベッドに運ばれて、私は緊張でガチガチに身を固めていた。


「A、そんなに怖がらないで」
「っ、テヒョンさん、あの、」


は、はじめてなんです。と出来る限りの声を振り絞って答えると、テヒョンさんは私の頭を撫でてから、また抱きしめてくれた。


「僕にはじめて、あげてもいいの？」
「っ、はい…」
「他の人にあげるつもりもないけどね」


目が合ったテヒョンさんの瞳は、いつもよりちょっと熱っぽい。テヒョンさんが私に好きだと言ってくれたコンサートの日と同じ髪色のテヒョンさんは、やっぱりキラキラしていて、星みたいで、アイドルなんだなと思う。


そんなアイドルのテヒョンさんが、私のことを組み敷いているんだと思うと、緊張と恥ずかしさでどうにかなりそうだった。


「優しくする」
「…はい」


テヒョンさんから、甘いキスが落ちる。何度も角度を変えてキスされて、酸素を求めて唇を開いた瞬間に、ぬるりとテヒョンさんの舌が私の咥内に滑り込んだ。びっくりして咄嗟にテヒョンさんの着ているTシャツを掴む。熱い。ぼーっとする。今までしてきたキスとは違う。


「息吸って、A」
「ん……、ふぁ」
「ふふ、…そう、上手」


自分から漏れるちょっと上ずった声。テヒョンさんのいつもよりちょっと掠れた声。背中がゾクゾクするようなテヒョンさんのキス。全部全部、知らないことだらけ。




「…僕だけ見て。僕だけ感じていれば大丈夫」


テヒョンさんに翻弄されて、乱れてしまった私の髪の毛を一束すくってキスを落とすテヒョンさんは、さながら王子様のよう。


息が上がって、ぼーっとする意識の中でテヒョンさんだけを見つめる。初めてだらけの時間で、恥ずかしいとか、気持ちいいとか、色んな感情でぐちゃぐちゃになった私には、テヒョンさんだけが正解で、優しく微笑んで私を包んでくれるテヒョンさんが全てだった。


「……A、」
「っ、ん、テヒョンさん、」
「사랑해」


耳元に直接響くテヒョンさんの声。テヒョンさんが呟いた韓国語の意味は、韓国語をあんまり知らない私でも知っている。私もテヒョンさんのこと大好きだよ、愛してるよ。そう伝えたくても、テヒョンさんにどろどろに甘やかされて愛された私には、そんな余裕はなくて。抱きつく力を強めることが精一杯の返事だった。

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