My Precious【TH】

38 ページ38

「今日は13時までアルバイトです…と」


テヒョンさんから早朝に、「今日の予定は？」なんてカトクが来ていた。とりあえず予定を返したけど、その後メッセージが既読にもならない。どうしたんだろうと思いながら、身支度を整えてバイトへ向かった。





「握手会、ですか」
「そうなの！久しぶりにジミンちゃんと握手できる〜！」


今日も菜々花さんと一緒のシフト。何着てこうかな〜と楽しそうに話す菜々花さんは乙女でかわいい。


防弾少年団は二週間後に日本でファンミーティングを兼ねたミニライブと握手会を行うらしい。忙しそうだし、もうしばらく会えないかなあと思っていたけど、もしかしたらそこで会えるのかな。


テヒョンさんと久しぶりに会う自分をイメージして、にやけた。うん、髪染めに行こう。




・
・
・




時計の針が、もうすぐ13時を指す。



「A、そろそろ上がりだよね」
「はい、お先に失礼します」


平日でかなり空いているし、残業もしなくて良さそうだ。菜々花さんと店長に挨拶をして、エプロンを解いた。


そういえば、テヒョンさんから返信来てるかな。



ロッカーで携帯を開くと、テヒョンさんからの通知が見えた。5分前。丁度良いタイミングだったみたい。





「…画像…？」





トーク画面を開くと、一件の写真が送られてきていた。



写っているのはちょっとレトロな雰囲気の扉と、本日のおすすめメニューが書かれた小さな黒板。




すごい、見覚えあるなあ。なんだっけ。






追加で送られてくる、「ここであってる？」という文章。








その文章にハッとした。




馬鹿か、私。







見覚えあるどころじゃない。このおすすめメニューを今朝黒板に書いたのは、紛れもなく私だ。レトロな雰囲気の扉は、店長の趣味のアンティークだって聞いた。



「っ、嘘でしょ…」



鞄に私服を詰め込んで、バイトの制服姿のまま裏口から外に飛び出した。





なんで。どうして。




頭の中はそれだけでいっぱいだった。



裏口を半周回った先にある、写真で送られてきたカフェの扉。



その前にしゃがみ込んで、黒板にカメラを向けている人。



その姿を目に写しただけで、涙が出そうでどうしようもない。









「っ、テヒョンさん…！！」





「あ、A！お仕事お疲れ様」




大好きな笑顔を浮かべるのは、紛れもなく大好きなテヒョンさん。



なんで、ここに居るんですか。

39→←37 TH

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す