193、殺す ページ48
エメラルドの瞳と紫の瞳が交差する。
「貴女の母親、百合を殺した?
僕は百合によって殺された遺族に"彼女の居場所"を教えただけです」
「ッ、殺したも同然でしょう!!」
Aは声を荒らげる。
実の母親を殺した男を目の前にして、冷静で居られる筈がなかった。
憎しみのこもった瞳でフョードルを睨む。
「貴方を殺す…!私がこの手で!!」
「僕を殺せるとでも?」
「殺す!絶対に…!」
国木田に教わったことを思い出す。
脇を締め、片目を瞑り、狙いを定める。
この距離なら外さない。
「貴方を撃つ。お母さんの仇…!」
もはや躊躇は無い。
Aは引き金にかかった人差し指を、曲げた。
パァン!!
空間を裂く音と共に、弾丸が直進する。
それは地面と平行に進んでいき______
"コンクリートの壁"に深い穴を開けた。
「……」
フョードルは生きていた。
眉間に穴が開くどころか、体のどこからも出血はしていない。
無傷であった。
「何故、僕を撃たなかったのですか?この距離なら外す方が難しいはずです」
静かに問うフョードルだが、その顔には微笑が浮かんでいる。
「…分かってる癖に」
「ええ、貴女の言葉で聞きたいのです」
Aは銃を下ろしてフョードルから視線をそらす。
「復讐は何も生まない、それを分かっているから」
母の死を悔やんでも、母が死んだ元凶であるフョードルを恨んでも、そこから生まれるものは何もない。
あるとすればそれは、さらなる復讐心や恨みだけだろう。
「だから、私は貴方を殺さない」
紫の瞳を見つめる。
フョードルは微笑んだ。
「賢明な判断です」
「ねぇ、もういいでしょ。私を皆の元に帰らせて」
「いいでしょう。今回は諦めるとします」
「私としては永遠に諦めてほしいところだけど」
Aとフョードルは互いに見つめ合う。
暫くそうした後、Aはフョードルの横を通り過ぎて走り出した。
「国木田A……否、小柳A」
フョードルはAの後ろ姿に白いフワフワした生物がついて行くのを見つめ、底の知れない表情を浮かべた。
「やはり貴女のことを気に入りました。
……いずれは僕の手の中に」
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ぺぽん(プロフ) - 。さん» 読んでくださりありがとうございます。読者様の言葉が制作するための活力になります!これからも頑張りますね💪 (7月4日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
。 - とっても面白いですね!応援してます (7月4日 1時) (レス) @page36 id: 26c600857a (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ココロさん» コメントありがとうございます🥹そんなこと言っていただけて、私の方こそ感謝でいっぱいです!これからもこの作品をよろしくお願い致します🙇 (7月3日 8時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ(プロフ) - ぺぽんさん» 私こそペぽん様に感謝しかありません!こんな素晴らしい作品を書いて頂いて.... ペぽん様のペースで良いので、更新頑張ってください(´・ω・`)これからも応援してます(*⌒▽⌒*) (7月3日 7時) (レス) @page36 id: e073f8258e (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ココロさん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです🥰これからも皆様に楽しんでいただけるよう、全力を尽くしますね! (5月30日 20時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺぽん | 作成日時:2023年2月18日 20時