191、全てを受け入れる ページ46
Aの脳内は疑問でいっぱいだった。
『どうしてフョードルがここに居る？』
先刻、この男は用事があると言って出かけた筈だ。驚きと恐怖で瞬きをすることすら忘れてしまう。
「なぜ……貴方がここに……」
震える声でAは問う。
頭のてっぺんから爪先まで一気に体温を奪われていく感覚だった。
「ふふ、そんなに怯えた顔をしないでください」
フョードルは微笑して言った。
「これはちょっとした賭けだったのですよ」
「賭け…？」
ええ、とフョードルは静かな声で言った。
「貴女が本当に"此方側"についてくれたのか、試したんです」
つまり、用事があると言って出かけたのは真っ赤な嘘。
Aの頬に冷や汗が伝った。
「僕の予感は当たったようです。貴女はこうして拠点から出て、仲間の元に戻ろうとしている」
フョードルは少なからず驚いていた。
あの時、少女は確かに墜ちたはず。
純白の天使が黒く染まった瞬間を目の当たりにしたのは紛れもない事実だ。
少女を絶望の淵に突き落とした。
それなのに何故、暗闇から這い上がることが出来たのか。
……いや、違う。
一度だけ、彼女に隙を与えてしまったではないか。
「なるほど、あの時ですか」
フョードルは納得したように微笑んだ。
「貴女に考える時間を与えたあの時、"何か"があったんですね？」
「……その通り」
Aは力強くフョードルを見つめた。
「私の母は、確かに大勢の人を殺した。沢山の人を不幸にし、絶望に陥れた。だけど！」
Aは、己の拳を胸の前で握りしめる。
「母親としての彼女を、貴方は知らない。そうでしょう？」
黒い天使として大勢を苦しめた彼女と、母親として子供を愛した彼女。
Aは"あの時"、その二つの姿を知ったのだ。
「私は、母がどんな人であったとしても受け入れる。その覚悟ができたから！」
だから、もう逃げない。
「自分の過去からも、母の罪からも逃げない。私は立ち向かう。立ち向かってみせる！」
Aの金髪がふわりと揺れる。
「死の家の鼠にはならない。私は、武装探偵社員の国木田Aだ！」
言い切ったAの瞳はもう濁っていなかった。
エメラルドの瞳は光を宿し、力強くフョードルを見上げる。
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ぺぽん(プロフ) - 。さん» 読んでくださりありがとうございます。読者様の言葉が制作するための活力になります！これからも頑張りますね💪 (7月4日 5時) (
レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
。 - とっても面白いですね！応援してます (7月4日 1時) (レス) @page36 id: 26c600857a (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ココロさん» コメントありがとうございます🥹そんなこと言っていただけて、私の方こそ感謝でいっぱいです！これからもこの作品をよろしくお願い致します🙇 (7月3日 8時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ(プロフ) - ぺぽんさん» 私こそペぽん様に感謝しかありません！こんな素晴らしい作品を書いて頂いて.... ペぽん様のペースで良いので、更新頑張ってください(´･ω･｀)これからも応援してます(*⌒▽⌒*) (7月3日 7時) (レス) @page36 id: e073f8258e (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ココロさん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです🥰これからも皆様に楽しんでいただけるよう、全力を尽くしますね！ (5月30日 20時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ぺぽん | 作成日時：2023年2月18日 20時
