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175、泣いてる子 ページ30

「はぁー、疲れた!」




Aは探偵社へ戻るために足を進めていた。
任務が一段落したこともあり、気分は晴れている。




「この後は任務後の報告書を提出して、鏡花ちゃん達とお昼を食べて……ん?」




軽やかな足取りで進んでいたAだったが、はたと歩みを止めた。
視界の隅に映った"小さな影"に疑問符を浮かべて数歩後ろに下がる。




「……子供?」




建物と建物の間の路地。
そこに居たのは、茶髪の少年だった。
小さな両手で顔を覆い、泣いているのか時折嗚咽が聞こえてくる。




「うぅ……ひっく……」




「君、どうかしたの?」




たまらず声をかけると、少年はビクリと肩を震わせて顔を上げた。
まだ幼さを感じさせる顔がAを不安げに見つめ、その口元が小さく動く。




「……たの」




「え?」




「迷子になっちゃったの」




「あぁ、迷子か……」




ここは人の多い横浜の繁華街。
親とはぐれた子供が一人や二人居ても不思議ではない。
Aは少年に手を差し伸べて微笑んだ。




「怖かったね、でももう大丈夫。一緒にお母さん達探そうか」




「……うん」




コクリと頷いた少年は涙を拭いてAと手を繋ぐ。




「君、名前聞いてもいいかな?」




「うん。島崎…島崎春樹っていうんだ」




その時、何か違和感を感じた。
一瞬、ほんの一瞬だけ少年の瞳が鋭く光ったように見えたのは気の所為だろうか。




「あのね、お母さんはあっちに行ったの」




しかし瞬きをする間にその鋭さは無くなっていた。
少年が指さしたのは、路地の先。




『こんな人気の無いところに少年の親が?』




不思議に思うが、少年が言うのだから進むしかない。
二人は手を繋いだまま歩き出し、路地の奥に消えていく。




「……馬鹿な奴」




少年の呟きはAには聞こえない。
島崎春樹と名乗った少年が薄く笑みを零していることなど、彼女は知る由もなかった。

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設定タグ:国木田独歩 , 文豪ストレイドッグス , 夢小説   
作品ジャンル:アニメ
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ぺぽん(プロフ) - 。さん» 読んでくださりありがとうございます。読者様の言葉が制作するための活力になります!これからも頑張りますね💪 (7月4日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
- とっても面白いですね!応援してます (7月4日 1時) (レス) @page36 id: 26c600857a (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ココロさん» コメントありがとうございます🥹そんなこと言っていただけて、私の方こそ感謝でいっぱいです!これからもこの作品をよろしくお願い致します🙇 (7月3日 8時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ(プロフ) - ぺぽんさん» 私こそペぽん様に感謝しかありません!こんな素晴らしい作品を書いて頂いて....  ペぽん様のペースで良いので、更新頑張ってください(´・ω・`)これからも応援してます(*⌒▽⌒*) (7月3日 7時) (レス) @page36 id: e073f8258e (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ココロさん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです🥰これからも皆様に楽しんでいただけるよう、全力を尽くしますね! (5月30日 20時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ぺぽん | 作成日時:2023年2月18日 20時

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