170、古き友人の御用 ページ25
「はぁい安吾?」
「お久しぶりです太宰君。
……今少し、お時間ありますか」
話があるんです。
電話越しでそう言った彼は、酷く思い詰めた声色をしていた。
太宰は二つ返事で了承すると、近くの駐車場に停めてあった安吾の車に乗り込む。
「で、話って何だい?」
「……探偵社に居る、国木田Aさんについてです」
「Aちゃんについて?」
安吾は小さく頷くと、ポツリと話しだした。
「太宰君は、20年前にあった『白雪虐殺事件』を知っていますか」
「ああ、それなら知っているよ。裏社会でも有名な事件だろう?」
20年前のある日を境に、裏社会の人々が次々に"脳死"で発見されるという無惨な現場が多発した。
死亡した人は皆、脳だけが潰れ、見た目は眠っている『白雪姫』のように見えたことからこの名前がつけられた。
「そして、その犯人は捕まるどころか、未だに容姿や名前すら分かっていない」
そうだろう?と確認するように安吾に顔を向ければ、彼は俯いていた。
「その通りです。しかし、つい最近になって犯人と思わしき一枚の写真が発見されたんです。一人の、女性でした。
そして、その女性の姿が……」
安吾は言葉を詰まらせる。
その表情は強張っていて。
太宰には彼の意図が読めなかった。
「姿が、なんだい」
安吾は小さく息を吐くと、太宰を見て一気に言葉を紡いだ。
「その写真に写っていた女性は、Aさんと瓜二つだったのです」
太宰は呼吸が止まった気がした。
「何が言いたい。Aちゃんはまだ十八歳だ。犯人な訳が」
「違う……違うんですよ」
太宰の言葉を遮った安吾の声が微かに震える。
「彼女は……黒い天使の……」
その言葉を聞いて太宰はハッと目を見開く。
黒い天使とは、以前、自分が無意識に口にした言葉だ。
「ちょっと待って、Aちゃんと黒い天使は何か関係があるのかい?」
「……詳しいことはまだ言えません」
安吾はそれ以上深くは話そうとしなかった。
「あと、太宰君に頼みがあります」
「頼み?」
安吾は口を開く。
その言葉を聞いて、太宰は目を瞑ると少し考えた。
「……分かった、すぐにやろう」
「ありがとうございます」
こうして、夜中の古き友人との再開は終わった。
安吾は家まで送りますと言ってエンジンをかけようとした、が。
「いや、入 水したい気分だからいいよ」
「自 殺趣味は相変わらずですね……」
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ぺぽん(プロフ) - 。さん» 読んでくださりありがとうございます。読者様の言葉が制作するための活力になります!これからも頑張りますね💪 (7月4日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
。 - とっても面白いですね!応援してます (7月4日 1時) (レス) @page36 id: 26c600857a (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ココロさん» コメントありがとうございます🥹そんなこと言っていただけて、私の方こそ感謝でいっぱいです!これからもこの作品をよろしくお願い致します🙇 (7月3日 8時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ(プロフ) - ぺぽんさん» 私こそペぽん様に感謝しかありません!こんな素晴らしい作品を書いて頂いて.... ペぽん様のペースで良いので、更新頑張ってください(´・ω・`)これからも応援してます(*⌒▽⌒*) (7月3日 7時) (レス) @page36 id: e073f8258e (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ココロさん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです🥰これからも皆様に楽しんでいただけるよう、全力を尽くしますね! (5月30日 20時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ぺぽん | 作成日時:2023年2月18日 20時