166、不機嫌の理由 ページ21
猫凶暴化事件が一段落した三日後のことである。
「あれは酷いですわ…」
「酷いね」
「おかしい」
「様子が変ですね」
敦が出社すると、谷崎、ナオミ、鏡花、賢治がひそひそと話をしていた。
敦は首を傾げる。
「どうかしたんですか?」
「…あれ」
そう言って鏡花が指をさした先には、デスクに座って書類整理をしているAがいた。
それも、不機嫌オーラ全開のAが、である。
眉間には皺が寄り、エメラルドの瞳には光がなく、数秒おきに溜息をつく有様。
その時、書類に誤字を見つけたのであろう彼女が、
「チッ、また間違えた」
盛大に舌打ちをした。
「ねぇ!Aどうしたの!?あんなキャラじゃないよね!?」
おっとしりている普段とは真逆の様子に、敦は小さく悲鳴を漏らす。
「ボク達も分からないんだよ。出社した時からあんな感じで……」
「近寄りがたいですわ」
五人は互いに目を合わせる。
この中の誰かが彼女を怒らせてしまったのではないか、誰か彼女に話しかける勇気ある者はいないかと無言の圧で押し付けあっていた時だった。
「A、少し休め」
勇者が現れた。
Aの兄である国木田独歩という勇者が。
「大丈夫だから」
「不機嫌オーラ全開で大丈夫な訳がないだろう、皆にも迷惑がかかる」
「でも仕事が」
「その隈はなんだ。最近よく眠れていないんじゃないか?」
ーー隈?ーー
敦達は顔を見合わせる。
確かによく見ると、Aの目の下には大きな隈ができていた。
「まぁ、眠れてないけどこれくらい……」
「いつものAじゃないのは皆お見通しだ。見てみろ、敦達が怖がっているだろう」
国木田に指摘されたAは、敦達に視線を移す。その際ギロリ、という効果音が付きそうなほど怖かったのは五人だけの秘密だ。
「下のうずまきで休んでこい。これは命令だ」
「……分かった」
Aは席を立つと、どこかおぼつかない足取りで探偵社を出て行った。
「国木田さん、Aちゃんに何があったんです?」
恐ろしさ全開のAが居なくなり、ホっとした様子で谷崎が口を開く。
「彼奴、最近悪夢を見ているようでな」
「悪夢?」
「あぁ。よく魘されている。その所為で寝不足になって不機嫌になっているんだろう」
国木田は困ったようにAが出て行った扉を見つめた。
187人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぺぽん(プロフ) - 。さん» 読んでくださりありがとうございます。読者様の言葉が制作するための活力になります!これからも頑張りますね💪 (7月4日 5時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
。 - とっても面白いですね!応援してます (7月4日 1時) (レス) @page36 id: 26c600857a (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ココロさん» コメントありがとうございます🥹そんなこと言っていただけて、私の方こそ感謝でいっぱいです!これからもこの作品をよろしくお願い致します🙇 (7月3日 8時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
ココロ(プロフ) - ぺぽんさん» 私こそペぽん様に感謝しかありません!こんな素晴らしい作品を書いて頂いて.... ペぽん様のペースで良いので、更新頑張ってください(´・ω・`)これからも応援してます(*⌒▽⌒*) (7月3日 7時) (レス) @page36 id: e073f8258e (このIDを非表示/違反報告)
ぺぽん(プロフ) - ココロさん» コメントありがとうございます、とっても嬉しいです🥰これからも皆様に楽しんでいただけるよう、全力を尽くしますね! (5月30日 20時) (レス) id: 83a944f022 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:ぺぽん | 作成日時:2023年2月18日 20時