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(no side)
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A家は、残念ながら家庭の幸せよりも憎しみや辛さが多かった、悲しい家だった。
Aの父は仕事に明け暮れ、そして仕事で得てくるのは給料と、それを遥かに上回る彼へのストレスだけ。そしてそのストレスは全て、Aの母へとぶつけられた。
Aの母は__菊子の娘は、強い人だった。けれどもいくら強くとも家事に育児に夫からのストレスに耐えるのは、Aが小学生になってしばらくして、ついに限界を迎えてしまった。
限界を迎えた母親は正気を失い精神の病となり、また荒れ出す母親に更に怒りをぶつける父親。結果的にAだけが、二人からのストレスを、苦しみを、受けることになってしまった。世にいう虐待だった。
急に連絡をよこさなくなった娘を不安に思った菊子が現状を知った頃には、Aの身体にはいくつもの痣や傷があった。
Aの祖父母に当たる人物は自分以外に生きてはいないし、引き取ってくれそうな親戚を今からしらみ潰しに当たる時間さえも惜しい__菊子の決断は早かった。
こうして、Aは小学校低学年にして、両親と離れた。
Aは菊子の元で、いつかの様な傷を負うこともなく育ち、高校生になる頃には自分の過去の話を知るようになっていた。
それを知った一週間後から、Aは新聞配達のバイトを始めたという。
それからというもの、彼女の行動は勉強かバイトのどちらかに二極化し、遊びや恋愛には脇目もふらなかったという。
その後は成績が優秀であった為、是非とも大学に行かせてあげてほしいという高校時代のAの教師の言葉と、A自身の大学に行けるならば行きたい、という意思を汲み取り、奨学金制度を使って進学。
ただ進学したことにより、余計に金銭面負担を気にするようになり、更にバイト詰めの毎日を送っている。
学校やバイトの場以外で、人と楽しさを共有したり笑いあったりすることをAがしたのは、お隣さんとの__マサイとの出会いが、実に中学生ぶりだった。
菊子は寂しいどころか、一人涙を流して喜んだ。
Aが、周りの子が皆遊んでいても一人バイトをし、そして帰ってきてからも勉強して寝るだけの、あの頃特有の楽しさを自ら欠落させた、強くて優しいAが。
やっと、そういった楽しさを味わえている。
彼女の笑顔は、毎日増えている。
きっと、Aにとっても、Fischer'sは大切な存在であると。そう、菊子は語った。
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いちごだいふく(プロフ) - hina4428さん» コメントありがとうございます!気になるところで長い間止めてしまっていました……ただいま更新しましたのでぜひ読んでいただければ嬉しいです! (2019年8月27日 16時) (レス) id: 619c5266ec (このIDを非表示/違反報告)
hina4428 - きになるっ!…続きがっ…気になるぞぉぉぉぉぉ!!!更新待ってます! (2019年8月15日 21時) (レス) id: bd94ce952c (このIDを非表示/違反報告)
いちごだいふく(プロフ) - めろこさん» コメントありがとうございます!そしてなんて嬉しいお言葉……!これからも頑張ります! (2019年5月29日 20時) (レス) id: 0069fa8620 (このIDを非表示/違反報告)
めろこ - いちごだいふくさまおかえりなさい。最近読み始めてまた更新して下さうことを楽しみにしておりました。これからの更新楽しみにしております! (2019年5月28日 22時) (レス) id: 9c37dcd8ea (このIDを非表示/違反報告)
いちごだいふく(プロフ) - ハルキさん» コメントありがとうございます!!嬉しい限りです、これからも頑張ります!(^^) (2019年3月24日 11時) (レス) id: 0069fa8620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちごだいふくlike | 作成日時:2018年12月5日 22時