ご近所付き合いはじめました。【Fischer's】

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ﾏｻｲside

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紅茶を作ってくる、と彼女が家に戻ってから20分。流石に遅すぎやしないか、と不安になってきた。いやまあ、Aちゃんなら紅茶の正しい淹れ方とか知ってそうだからそれで時間かけてるのかもしれないけど。

気になってLINEだけ入れておくことにした。

マサイ俺紅茶にどんぐらい時間かかるか知らないけど、ちょっと遅くない?あんまり遅いと菓子全部ダホに取られるぞー

これで、まあいいだろう。
誤字がないかどうか、送った文章を見返してからふと思う。初めの撮影から今日まで、Aちゃんとの距離感は変わった。きっと、いい意味で。現に俺が今ちゃん付けで呼んでいることが変化の一つだし、同業者(YouTuber)
の方以外でこんなに女性と頻繁に関わることそのものが、一番大きな変化でもある。

Aちゃんは、俺らの楽しさに溢れた日常に、生活らしさと癒しをくれている。手作りの晩ごはんを口に運ぶ機会なんて、(俺が言えることでもないけど)特にシルクとかは実家に帰りでもしなければゼロに等しいだろうし。
癒しという点では、そうだな、たまに作ってくれるお菓子は勿論、話し上手で聞き上手な彼女と話しているだけで随分とストレスが解消される気がするのだ。

こういう気持ちをすぐに恋と仮定するのは違う気がするから、今はまだお隣さんとしての距離。でもこうとも思う、
彼女は今の俺には、俺らには、必要不可欠な存在なんだ、とも。


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『……あ、すみません緊急です、はい、住所はｰｰｰで……はい、10分ほど前に私が外出先から自宅に戻ると祖母が意識を失って倒れていて、はい出血等はありません……』

割りと落ち着いて対応できている気もするけど、電話先から傷病者の様子を教えてください、と言われておばあちゃんに触れる度に鼓動が嫌に速くなる。大丈夫、おばあちゃんの鼓動はまだ無くなってはいないんだから。ただ、弱くなってるだけだから。だから。

『分かりました、下に降りておきます、はい、ありがとうございます、失礼します』

電話を切って、おばあちゃんに防寒着を着せて暖かくさせておく。さあ困った、どうやって降ろそうか。
いや私の体力でも持てないことはないけど、他にも必要なもの持ちたいし……

ﾋﾟｺﾝ♪

ポケットから聞きなれた音がして、その音で思い出した。ああ、彼なら。

焦りでもたつく指でアプリを開いて、電話をかける。

ﾏｻｲ「もしもし？……どうしたの？」

その声で、涙が出そうになった。

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