*10. ページ12
シルクside
『すみません、ちょっと失礼します』
そう言ってスマホを片手に小走りで出ていった彼女の背を見ながら、俺はふと頭に疑問が浮かぶ。
四つのバイトを掛け持ちって、何でそんなきついことを……?
大学生といえば学生時代の中で、それどころか人生で一番華がある時期だとはよく言われるし、バイトをする事自体は普通だと思う。にしてもだ。大学に通いながら四つのバイトを掛け持ちすることが可能なのか。
一度不思議に思い始めれば、どんどんと色々な事が気になり始めてくるもので。
彼女は隠しているようだが、電話でこの場を抜けるのがこれが最初ではないことに、俺は気づいていた。最近は会社のみならずバイトであっても、”ブラック“と呼ばれる所が多いというニュースも併せて、まさか今から出勤しろと言われているのでは、という予感がした。
あと、彼女がマサイと出会ってから、自分が視聴者であることを隠すどころか、一切関わりをもたないようにしていた、というのも気にかかる。普通であれば近づいてくるはずなのに。
そして、これはきっと聞いてはいけないけれど、一番最初に気になった事。
彼女はなぜ、両親とではなく祖母と二人で暮らしているのか__
『すみません、遅くなりました』
そこまで考えたとき、彼女の声が聞こえた。
あまりにもタイミングが良すぎて、これはきっとこれ以上一人で詮索するな、ということかと勝手に納得する。
『シルクさん?』
シルク「あぁごめん、ボーッとしてた!」
『お忙しそうですもんね、お疲れ様です。今日のお酒とか、明日に影響ありませんか?』
シルク「全然大丈夫。何なら普段からよく撮影の後にメンバーで飲み行ったりするし」
よかった、と呟いて安心した顔を見せる彼女に、本当にしっかりした子だなと親戚のような事を考える。先ほどから誰かの器の中身が空になれば即座にお代わりを入れたり、お茶がなくなれば入れてきたりと、気遣いと動きの速さがレストランのウェイトレスさながらだった。
シルク「あ、そうだ」
そんな彼女とも、これから仲良くしていければ。メンバーやYouTuberという仲間内だけではなく、ご近所さんとの付き合いというのも、初心にかえれば大切なことだと、改めて気づいた。
シルク「タメ口でいいよ。視聴者とYouTuberっていう関係じゃなくて、ご近所さん同士。そういう感じなら、上手くやってけそうじゃね?」
そう言えば、しばらく硬かった彼女の身体から、力が抜けたような気がした。
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いちごだいふく(プロフ) - hina4428さん» コメントありがとうございます!気になるところで長い間止めてしまっていました……ただいま更新しましたのでぜひ読んでいただければ嬉しいです! (2019年8月27日 16時) (レス) id: 619c5266ec (このIDを非表示/違反報告)
hina4428 - きになるっ!…続きがっ…気になるぞぉぉぉぉぉ!!!更新待ってます! (2019年8月15日 21時) (レス) id: bd94ce952c (このIDを非表示/違反報告)
いちごだいふく(プロフ) - めろこさん» コメントありがとうございます!そしてなんて嬉しいお言葉……!これからも頑張ります! (2019年5月29日 20時) (レス) id: 0069fa8620 (このIDを非表示/違反報告)
めろこ - いちごだいふくさまおかえりなさい。最近読み始めてまた更新して下さうことを楽しみにしておりました。これからの更新楽しみにしております! (2019年5月28日 22時) (レス) id: 9c37dcd8ea (このIDを非表示/違反報告)
いちごだいふく(プロフ) - ハルキさん» コメントありがとうございます!!嬉しい限りです、これからも頑張ります!(^^) (2019年3月24日 11時) (レス) id: 0069fa8620 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いちごだいふくlike | 作成日時:2018年12月5日 22時