ご近所付き合いはじめました。【Fischer's】

はじめまして。 ページ2

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『っはぁ〜〜！おばあちゃーん、終わったよ〜！！』

朝から休み無しの荷ほどきがついに終わった。歓喜の気持ちを少し先のリビングまで届くように叫んでから時計を見ると、夕方の五時。自分の集中力がここまで続いたことに感動しながらリビングへ向かうと、ちょうど懐かしい匂いが漂ってくる。

「はいお疲れさん、あんたえらい集中してたからお昼できたよー、って声かけても気づかんかったんよ」
『えっ嘘』
「そんな嘘ばあちゃんはつきません」

声をかけられても気づかない、のレベルまでいくと最早褒めるというより心配になる。大丈夫か私。

懐かしい匂いの正体である黒豆茶をすすり、晩ごはんどうしようか、とスマホを触る。悩み顔のおばあちゃんにスマホの画面を突きつけた。

「……こりゃ中華料理のお店なの？」
『そう！最近オープンしたばっかりで友達が食べに行ったんだけどめちゃめちゃ美味しいらしくて！！今日ぐらい引っ越し祝いってことで行かない！？』

うーん、と乗り気じゃないおばあちゃんに『ここの人気な理由ね、杏仁豆腐やってさ』ともう一押しすれば「まあ今日は仕方ないかねぇ」とそれはそれは笑顔で言ってくれた。うん、うちのおばあちゃんは甘党だ。［毎日甘い物に囲まれたいから］なんて理由でパティシエになったくらいには甘党だ。

そうと決まればすぐ行こう、とぱぱっと着替えて十分後、二人してうきうきで家を出た。

『いや〜楽しみ〜……！』
「杏仁豆腐は私も二回ほどしか作ってないからねぇ」
『えっ逆に作ったことあるの』
「そりゃあそういう職やったからねぇ」

夜の色が混ざりかけた橙の空の道を歩く。
想像以上に日が落ちるのが早いね、こりゃ帰りはタクシーだなあ、と話していた、その時。

『わっ！』
???1「ああすみません！！大丈夫ですか！？」
『んえ？あ、こちらこそすみません……？』
「こらしっかり前向かんから……すみませんねえ、この子がぼーっとしてて……」
???2「いやいや、俺らも何も気にせず歩いてたんで……お怪我ありませんか？」

曲がり角で二人の男性と衝突。
一人は背の高くて彫りの深い顔の方。もう一人は男性にしては小柄な、けれど活発そうな方だった。
けれど不思議なことに何故か、

【見覚えがある。】

この男性二人への凄まじい既視感に頭を悩ませていると、おばあちゃんにぺしりと腕を叩かれて行くよ、と引っ張られてしまった。慌ててお辞儀をして、おばあちゃんについていく。

結局、既視感の理由は分からなかった。

＊1.→←設定もろもろご紹介。

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