言葉の意味�� ページ35
隣に立つマルフィは、「？……、」と不思議そうな顔をして首を傾げていた。Aがそれに釣られて、ん？と微かに首を傾げると、マルフィは、じゃあ夜まで見ている？ とほんの少し困惑したような顔で控えめに言った。本当に何も分かっていない、そんな彼の表情に思わず、っえ、と間抜けな声が出た。
嘘。そういう事じゃなかったの？ でもこの前……もしかして、覚えてない？
そこまで考えて、途端に、カッ……と顔が熱くなった。あれは本当に何気ない会話だったのだ。自分が何となく覚えていただけで、彼はあまり気にも止めてない会話だったのかも。それなのに、勝手にそう思って、勝手に緊張して、、。
ぼぼぼ、と一層顔が熱くなる。穴があったら入りたいとはまさにこの状況。つまり自分は、夕日が綺麗という"普通"の言葉に、変な答えを返した変な子になってしまったのだ。
どうしようもなく恥ずかしくなってしまって、もういよいよ前なんて向けない。ぎゅ、と握った手を見つめて、どう誤魔化せばいいのかと考えることしか出来なかった。
「夕日、見なくていいのかい？」
して、マルフィは何も知らないといった様子で、下を見つめるAに声をかけた。しかしその声色はいつもと変わらない。まるで何も無かったかのような、自然な言い方。どうやら先程の言葉を流してくれたらしい。彼はいつも最大限の気遣いをしてくれる。周りをよく見ているというか、痒い所に手が届くというか。とにかく全てがスマートなのだ。それにいつも助けられてばかりだった。あぁ、かっこいいな、と思うと共に、また少し恥ずかしくなった。でも、せっかく彼が気遣ってくれたのだ。私も普通にしないと、と思って視線を前に戻す。
「夕日、綺麗だね。」
Aが視線を戻すと、マルフィは改めて言った。言い方はやはり普通。声色からは何も分からない。しかし今度はもう迷わない。これは、普通に感想。
眼前に広がる夕日は刻々と色彩を濃くしていて、鮮やかに辺りを照らしている。それでも空の上の方は、少しずつ紫色に染まっている。ため息が出るほど綺麗だった。だからAは、うん、綺麗だね、と返した。内心まだドキドキしているが、今度こそ、変な返しはしていないはず。ふう、と彼にも分からないくらい小さく息を吐いて、自分を落ち着かせようと試みる。
しかし。
「おや、さっきのようには言ってくれないのかい？」
マルフィが、笑みを含んだ声色で、ひそ、と内緒話をするみたいに言った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 197人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あいむ(プロフ) - ユウウさん» 返信ありがとうございます。かしこまりました！ 続編での更新になりますので少々お待ちくださいませ！！ (2022年12月12日 22時) (
レス) id: 703a955963 (このIDを非表示/違反報告)
ユウウ - あいむさん» 言い忘れていたのですが、現パロというより学パロでお願いします。重要なことなのに言い忘れてすみません。関係性は恋人で全体的に甘い雰囲気でお願いします！ (2022年12月12日 7時) (レス) id: 452cd22222 (このIDを非表示/違反報告)
あいむ(プロフ) - ありがとうございます！ リクエスト承りました！ 現パロという他になにか、こうしてほしいなどのご要望はありますか？？ （関係性など） (2022年12月10日 22時) (レス) id: 703a955963 (このIDを非表示/違反報告)
ユウウ - 初コメです！毎回楽しみに見させていただいてます。リクエスト失礼します。アップルポイズンの現パロををお願いします！これからも応援させていただきます！ (2022年12月10日 19時) (レス) id: 452cd22222 (このIDを非表示/違反報告)
あいむ(プロフ) - トワイライトさん» 今年のハロウィンのパレードはまた沼に引きずり込ませにきてますよね…ひと時の秋、楽しんでいきましょう！ リクエストありがとうございました！ (2022年10月2日 12時) (レス) id: 703a955963 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：あいむ | 作成日時：2020年2月4日 23時
