カウントダウン【夏油傑】 (ページ3)

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今日は1人で任務だった。
高専に戻って来た私はとりあえず自分の部屋へ行こうと、寮内の廊下を進む。

「…………ん？」

私の部屋が、何やら騒がしい。

「……悟と硝子か。」

たまに、私の部屋を勝手に使って騒いでいるのだ。
使う時は言えとあれ程言っているのに。

呆れつつドアノブに手をかけ、扉を開ける。

「おい悟。使う時は言えとあれほ」

「ﾌﾞﾌｯ！」

「…………は…………？」

あれ程言えと言っているだろう。
そこまで言いたかったのだが、
私が部屋に入った瞬間、悟が投げたのであろうアップルパイが、私の顔面にクリーンヒットした。

目の前には、笑い転げる悟。
携帯で写真を撮っている硝子。
固まる私。
それを引き気味で見ている後輩3人。

そして地面に転がるアップルパイ。

『……わ、わたしたちは止めたんですよ！顔面は流石に辞めましょうって！』

「でも五条さんがどうしてもって！」

「あ、おいテメェら！先輩を売るのかよ！」

「売るも何も事実でしょう。」

そうか、悟か。
顔面だけではなく、部屋も汚し＿＿＿＿＿

「ん……？」

足の横で拳を握りワナワナと震えていると、テーブルに目がいった。
そのテーブルの上には、山盛りのざる蕎麦。

「サプライズですよ！」

満面の笑みで、灰原がそう言った。

余りにもいい笑顔で言うもんだから、思わず頬が緩む。

「……普通こういう時はケーキとかではないのかい？」

困惑しつつそう聞くと、悟が口を開いた。

「俺がホールケーキ買おうとしたら、灰原が傑の好きなモンの方がいいんじゃねぇかっつったんだよ。」

「成程……？でも何故サプライズなんか……。」

誕生日……はまだまだ先だし、何か特別良い事があった訳でもない。
むしろ任務で失敗した。
眉間に皺を寄せ考えていると、今度は七海が口を開いた。

「夏油さん、この間の任務の事気にされてますよね。あんなミス誰にだってあります。気にしないでください。」

『美味しい物食べて元気出してください！』

「ほら夏油さん！早く早く！」

出入り口で立ち尽くしていた私を灰原が引っ張り、床に座る。

……あの時、私がミスをして落ち込んでいた事で一緒に居た七海とAに心配をかけてしまったのか。

すまない。

そう言おうとしたが、その言葉は飲み込んだ。
申し訳ないという気持ちよりも遥かに大きな感情が湧き上がり、目頭が熱くなるのを感じる。

「……ありがとう。今の……、今の私は、幸せ者だ。」