弐 ページ41
「初めまして、太宰Aさん。僕は坂口安吾と申します」眼鏡の青年は自分の胸に手を添えて、微笑んだ。社交辞令のようなあれだ。
「…初めまして」
知らなかった。相手は自分の名前を知っていて、自分は相手の名前を知らない、その状況がこんなにも得体の知れない感情を抱くものだったなんて。今では身の切れるような外気も薄気味悪い。
(…あれ？でも確か、坂口安吾って…)
「それで、
森さんの言葉で、稲妻が落ちたかのように思い出した。
坂口安吾。確か入学式の時、教員紹介の中で聞いた名前だ。
そして審問官。もし、魔法処魔法魔術学校内にて魔法犯罪が行われた際に、その犯人を捕縛、事件性のあるものと見なした場合の処置、犯人の処遇の一切を担当する、謂わば魔法省の走狗だ。普段は魔法処で普通の教員と何ら変わらぬ職務を全うしているらしい。
(そうか、今回の佐々城の事件でお出ましというわけだな…)
おそらく私の与り知らぬところで、この男はこの事件の後処理の殆どを行った筈だ。佐々城の捕縛、尋問、早ければ彼女を独房へぶち込む手筈も既に整えただろう。
そう、しかし私の今世はいつも思いもよらぬところへ転がる。
「しかし、こんな冬の夜空の下で立ち話もなんでしょう。ウバ茶くらいなら出せますが」
森さんの提案に応じて、一同門の中へと誘われた。確かに此処は寒すぎる。けれど、今の私は熱いウバのミルクティーを冷え切った身体に流し込む前にやっておきたい事があった。
先刻から一言も喋っておらず、ずっと後ろの方を歩く織田先生だ。私は彼の隣に向かった。雪の絨毯に、大きい足跡と小さい足跡が並んだ。
「織田先生、治の意識が戻ったんです」つっかえる事なく、その報告を告げた。
先生はほんの一瞬、立ち止まった＿口元は、巻かれた襟巻に隠されて見えなかった。
「そうか…それは良かったな」
随分と素っ気ない言葉だったが、私はこの男の内面をまだそれほど知っているわけではない。治の方がよく知っているだろう。私がこの反応を評価するというのは役割違いも甚だしいというものだ。
「先生の事、友達だって云ってました…これからも、よろしくお願いします」
私は辞儀だけして、森さんのもとに帰った。
…いずれは、彼とも話をしなければならない。どうして、彼が�爐△量椨瓩濃笋鮓�るのか。私の中の誰を、見ているのか。
でも今は…何となく、彼からその話を聞くのが、怖い。
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サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» こんな細かい描写にも気づいて頂けるなんて物書き冥利につきます！消せませんよ、でもここでは説明し切れないので後日改めて説明させて頂きますね! (2018年12月13日 20時) (
レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» お久しぶりです。しぇるふぃあ。さん、すごく読んで頂いているようなのでとても嬉しいです、ありがとうございます。 (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - ところで夢主ちゃんは前世が国語教師なのですよね？だったら41pに出てくる安吾さんの名前は知ってるはず…と違和感を覚えました(・・?) はっもしや伏線？ネタバレに触れるようでしたらこのコメントはそっ消ししてくださいm(_ _)m これからも陰ながら応援してます!! (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - お久しぶりです！しばらく顔を出せなかった間にすごく進んでて一気読み不可避でした…あんまり好きポインツ語るとコメ欄ネタバレになるので控えますが仲直り本当に良かったです(ネタバレ) (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 紫苑さん» 応援ありがとうございます!頑張らせていただきます！ (2018年12月2日 23時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2018年9月20日 12時
