第二十八章 逃げる時 壱 ページ32
翌日、私は朝食も摂りたくなかったけれど、森さんとロビンに奨められて食卓についてから、邸宅を後にした。森さんは私に附いて行きた気な表情だったけれど、仕事から手が離せないらしかった。
一人で病院へ向かった。移動手段はバスで、勿論これは魔法界の者が常用する車体…全身真っ白の巨大なボディだった。染み一つ見当たらないそれは道行く人に一切視線を投げられない。雪の積もっている車道にもタイヤの跡が付いていなかった。
私は中年の運転手に目的地を告げた後、すぐに手近の席に座った。隣にはまだ妙齢に見える青年が座っていた。鈴の付いた耳飾りがバスが揺れる度にチリチリと歌っている。うたた寝していたのだろうか、彼は瞼を軽く閉じている。…かと思いきや、青年は目を閉ざしたまま、私の方を見下げた。
「お嬢さん。そんなに急いで、ご友人と遊びにでも行かれるのですか？」
「…いえ」
いの一番に、私は違和感を感じた。どうしてだか、理由はまだ判らなかった。
本当は前述の通り病院に向かっているのだけれど、今日偶々バスで隣り合っただけの男に教えてやる道理はない。
私は人見知りしがちな小娘を装って、目を伏せてしまった。…まだ、あの青年が閉ざされた目で、私の旋毛を覗いているような気がする。
「今日から魔法処も冬期休暇に入るのでしょう？風邪を召されないようにしなくてはいけませんね」
「…そうですね」
私は早くバスが病院前の停留所に着かないかと床を何度も踏んだ。この男といると、蛇の蜷局に巻かれた蛙のような気持ちになる。
「…、」
ふと、その威圧感が消えた。私はいつの間にか息を止めていたようで、解放されたように堰き止めていた息を吐き出した。
隣の青年を確認すると、彼は今までその顔面に貼り付けていた虚無的なアルカイック・スマイルを剥がされたような、崩落した表情をしていた。ある一点を見つめて。
私もつられてそちらを見ると、何ということだろう。
バケツを抱えた青年が、くちゃくちゃ何かを咀嚼しながら、通路に立っていた。しかもそうであって欲しくない事に、こちらを見ていた。
…何でそんな事するんだ！これでは知り合いだと思われるじゃないか！
私の、おそらく私たちの願いも無視して、青年はくちゃくちゃとバケツの中身を匙で掬って頬張る。
「おはよう、条野」
…挨拶はきちんとする性分らしい。どうやら私の隣の青年は条野というようだった。…�狷畔發虜Ｆ�の下着の色�疂造砲匹Δ任發いぞ霾鵑世福�
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サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» こんな細かい描写にも気づいて頂けるなんて物書き冥利につきます！消せませんよ、でもここでは説明し切れないので後日改めて説明させて頂きますね! (2018年12月13日 20時) (
レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» お久しぶりです。しぇるふぃあ。さん、すごく読んで頂いているようなのでとても嬉しいです、ありがとうございます。 (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - ところで夢主ちゃんは前世が国語教師なのですよね？だったら41pに出てくる安吾さんの名前は知ってるはず…と違和感を覚えました(・・?) はっもしや伏線？ネタバレに触れるようでしたらこのコメントはそっ消ししてくださいm(_ _)m これからも陰ながら応援してます!! (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - お久しぶりです！しばらく顔を出せなかった間にすごく進んでて一気読み不可避でした…あんまり好きポインツ語るとコメ欄ネタバレになるので控えますが仲直り本当に良かったです(ネタバレ) (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 紫苑さん» 応援ありがとうございます!頑張らせていただきます！ (2018年12月2日 23時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：サラ | 作成日時：2018年9月20日 12時
