検索窓
今日:3 hit、昨日:4 hit、合計:23,847 hit

ページ13

「…ほら、良かったね。治の好きな蛙チョコレートもあるよ。またカードが増えるね…」

私はそう云って、卓上に駄菓子を順々に置いていった。最後の百味ビーンズの箱を取り出そうとした時、まだ他にも物がある事に気付いた。感触からして紙袋だ。私はそれを手に取って、袋から取り出した。

「…?」

細長い紙袋だった。何か紙片が貼られていて、そこには『地下の屑籠で拾った』などと走り書きがされていた。会長の字だ。最低限読めるような字だった。勿論、袋の中身は確認した。…あまりに色々な感情が綯い交ぜになって、いっそ開けなければよかったとも思った。

 袋の中に入っていたのは、簪だった。一見、魔法の杖のようにも見えた。そう云えば、と思い出す。

_…君も杖を持てたらいいのに。

そう彼に云われた時、私は何と答えたんだろう。何と思ったんだろう。今はもう思い出せない。

すっかり忘れていた。太宰少年を蔑ろにしていた証拠を突き付けられたような気分だった。

 (…少年、君は怒るだろうか)

私がこれから為そうとしている事は、今までの君の恩を蔑ろにする行為だ。私は最期の最期まで、きっと兄孝行をしないだろう。今までの君からの愛情に気付かなかったように。

(私は利己的だ。それを許してくれとは云わない)

袋の中には誕生日カードも入っていた。
 思い返せば、今年の誕生日は忙しかった。いじめをまだ受けていた時期だった。生徒会に入った。もしかして、太宰少年は私に気を遣ってこの贈答品を贈らなかったのだろうか。それでずっと、こんな肌身離さず…そして私はそれに気付きもせず…。
 私は手中の簪が小さな悲鳴を上げる程に、強く握りしめた。

「…絶対に、君の目を覚まさせるよ。少年、約束だ」

私の命を犠牲にしても。

第二十六章 思いがけない人 壱→←伍



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.7/10 (29 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
42人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» こんな細かい描写にも気づいて頂けるなんて物書き冥利につきます!消せませんよ、でもここでは説明し切れないので後日改めて説明させて頂きますね! (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - しぇるふぃあ。さん» お久しぶりです。しぇるふぃあ。さん、すごく読んで頂いているようなのでとても嬉しいです、ありがとうございます。 (2018年12月13日 20時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - ところで夢主ちゃんは前世が国語教師なのですよね?だったら41pに出てくる安吾さんの名前は知ってるはず…と違和感を覚えました(・・?) はっもしや伏線?ネタバレに触れるようでしたらこのコメントはそっ消ししてくださいm(_ _)m これからも陰ながら応援してます!! (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
しぇるふぃあ。 - お久しぶりです!しばらく顔を出せなかった間にすごく進んでて一気読み不可避でした…あんまり好きポインツ語るとコメ欄ネタバレになるので控えますが仲直り本当に良かったです(ネタバレ) (2018年12月13日 19時) (レス) id: a3aac3bf63 (このIDを非表示/違反報告)
サラ(プロフ) - 紫苑さん» 応援ありがとうございます!頑張らせていただきます! (2018年12月2日 23時) (レス) id: 4e09bde857 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:サラ | 作成日時:2018年9月20日 12時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。