どんな色が好き No.2 (ページ9)

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※ 離れて行かないで S.S ☆ ページ9

ついにこの日が来てしまった

ホグワーツ魔法魔術学校卒業式

今日の主役は私達で、皆別れを惜しんだり祝ったりガヤガヤと騒いでいる

かく言う私も友人達と別れを惜しみながら、明日から誰も守ってくれない世界に放り出される恐怖を少し覚える

人混みをかき分けながら、忙しなく辺りを見回して目的の人物を探す

「A」

名前を呼ばれると同時に周りに気付かれないように手を引かれ、人混みの中から抜け出した

いつもと同じ背中を見ながら死角に隠れるように立ち止まると優しく手を離された

「ここに来るのも今日で最後なんだな」

彼はホッとした様な悲しい顔で私を見る

「えぇそうね。ここで多くを学んだわ」

「A、僕は君と出会えてよかった」

彼は私の欲しい言葉をくれる

だけど彼の目にはいつもリリー・エバンズがいて、後にも先にも彼女しか目に入らないのに。そんな言葉なんて要らない。と言えたらどんなに楽か

私は本心にぴっちり蓋をしていつもの様に綺麗に仕上がった笑顔を向ける

「私もセブルスと出会えてよかったわ。餞別として受け取ってくれる？」

ロケットを押し付ける形で差し出すと首にかけて服の中に入れた

「どんな時でも肌身離さず持ち歩いてね。必ずよ」

「わかった...ありがとうA」

「セブルスからお礼なんて、珍しい事もあるのね？」

「最後まで相変わらずだな」

セブルスの最後という言葉が胸に突き刺さって鈍い痛みに変わる

「私は明日からオーラになる」

「知ってる」

何を言うたいのか分かっているセブルスは私を見つめたまま、申し訳ないように微かに顔を曇らせた

「手紙の返事も書いてよね」

「書かなければ何通も寄越しそうだ」

「よくお分かりで」

肩を竦めて笑えばセブルスも柔らかく笑う

それも一瞬でお互い見つめ合うと抱き締めたくなったが、これからの事を考えると出来なかった

「また会えるよね？」

「あぁいつかまた必ず」

「きっとよ？」

「きっと。さぁもう行け」

セブルスに笑いかけると手を上げて笑い返してくれた

好きよセブルス...お願い、どうか死なないで

心に秘めた想いを胸に背中を向けて走って行った

卒業してすぐ手紙のやり取りは続いていたが、ある日を境にぴたりと返事が届かなくなった

不思議でもなんでもないその理由。リリー・エバンズとジェームズ・ポッターの婚約だ

「おめでとうリリー。とても綺麗よ」

「ありがとうA」