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静まり返った教室。聞こえるのはふたつの呼吸の音と、何処かの教室からの笑い声。
なんだか寂しくて、急なセンチメンタルと相まって目頭が熱くなって、
「そんなことあらへん」
それは、静寂に打ち解けるような、柔らかな声だった。
顔を上げると、いつもの騒がしさは何処かに置いてきたのか、やけに静かに語るロボロがそこにいた。唇を引き締めた表情は、見たことがない。
「お前の髪、めっちゃ綺麗やし。ひとつひとつの仕草とか女らしいと思うで」
窓から差し込む夕日が瞳に反射して、鮮やかに光る赤が、やけに綺麗で。言葉をひとつひとつ口の中で復唱して、理解して、途端体が、熱くなった。
きれい、?女らし、い?
「は、な…なに言ってんの!?」
顔が熱い、熱中症になったんじゃないかってぐらいにあつい。
でも、ロボロは何も答えなくて。ただ見つめてくるだけで。でも、それさえも更に熱を上げる要因でしかない。
「ほ、ほら!練習しなきゃ、ね!」
知らないこの空気に落ち着かなくなった私は、甘い何かを掻き消すようにそう声を上げた。飲み込まれる。本能的に、そう悟った。
*
瞬く間に過ぎた三週間。
本番の真っ最中、幕の外の語り部が話し終え、舞台の準備が終わった後にいよいよラストシーンを迎える。
忙しなく動き回る裏方の邪魔にならないように舞台袖の、さらに奥に並んで立つ私とロボロ。
あの教室で告げたように、ウィッグと衣装を身に着けたロボロは綺麗なお姫様になっていた。それと同時に、私はやっぱりお姫様って柄じゃないな、と思っていた。
「なぁ」
珍しくずっと言葉を発しなかったロボロが言う。
「ん?」
「あの放課後に俺が言ったこと、覚えとるか?」
言葉が、つまった。丁度私も思い出していたところだったから。いや、思い出してしまったから。夕日が射す放課後に、言われたロボロの言葉を。
「A」
「な、に――」
動揺しているのを悟られたくなくて、ロボロから意識を逸らしたその一瞬、唇に熱が触れた。
顔を離し、私を見つめる瞳は悪戯ぽく笑っていて。
「俺こそ、お姫様って柄じゃあらへんな。Aの方がよう似合うで」
その笑みはお姫様とは到底言えない男の顔。
「ロボロ―!準備できた!」
「はーーい!じゃ、先行っとるで!」
「あ、うん」
何事もなかったかのように駆け出したドレス姿を見送った後、同じクラスの子たちに指摘されるまで、顔が赤いことに気づかなかった。
にゃんじぇらしー / zm→←お姫様じゃいられない / rbr
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ももね(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!喜んでくださったようでうれしく思います。私自身も「お友達から始めませんか、」は特にお気に入りのお話でしたので続編を書くのはとても楽しかったです!この度はリクエストありがとうございました! (2020年5月14日 22時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - ももねさん» ももね様!リク消化ありがとうございます!もう好きすぎて言葉に表せないくらい好きです!ももね様!本当にありがとうございました!愛してます! (2020年5月13日 22時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
ももね(プロフ) - 天真爛漫さん» ありがとうございます!天真爛漫さまのご希望に添えたなら幸いです。今後ともよろしくお願いします! (2020年5月8日 10時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
天真爛漫 - 作者様、素敵な作品を書くてくださり、ありがとうございました!! (2020年5月6日 21時) (レス) id: 545c0410b5 (このIDを非表示/違反報告)
ももね(プロフ) - りんごさん» はじめまして!コメントありがとうございます。ありがとうございます…!好きなフレーズを題名にさせてもらいました!^^リクエスト承りました!執筆が完了次第投稿させていただきます。よろしくお願いします! (2020年5月3日 23時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももね | 作成日時:2020年4月13日 19時