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Aは知らんやろうけど、大学の入学式の日に見かけたことがあってな。傍に大先生がおったから、名前はそこで聞いた。
それからキャンパス内で見かける度に目で追いかけもうて。…まあ、傍からみたらバレバレやったらしいわ。
今日も、合コンにAが参加しとるって大先生に連絡もらってな。先生の協力の元、参加者装って途中から参加したんやけど、
「そしたら、変な男に絡まれとるしでほんま肝が冷えたわ、…なんもなくて良かった、ほんま」
明かされる真実に私は口を挟むこともなく瞬きを繰り返すだけだ。何も言わない私に勘違いして、すまんな、気色悪いやろと眉を下げる顔にようやく、そんなことないと声を上げた。
「助けてくれて、本当に嬉しかったし助かった。できればあの雰囲気を壊したくなかったから」
楽しい空間を壊したくない一心で身動きが取れず、困っていた私を助けてくれた。それも、雰囲気を壊したくないという気持ちを汲んだうえで。
吃驚したけど、気持ち悪いとか思わない。寧ろありがとう。私なりの精一杯を伝えると、トントンは暫く呆けたあと、よくわからない声を上げてマフラーに口元を埋めてしまった。
「…あかんわ、」
「トントン?」
「…もっと、気色悪いこと言ってもええか?」
驚きを口にする間もなく、手を取られそっと握りこまれた。少し冷えた体の中で、繋いだ手だけが温かい。
マフラーから露になった口が、動く。
「Aのことが、好きなんや」
「は、え」
「せやから。お付き合いを前提に、友達になってくれませんか」
「…え」
予想外のセリフに私も、言った本人も目を丸くした。トントンは手を離したかと思ったらいきなり背を向ける。いやお付き合いを前提にってなんやねん、あほちゃうか俺。なんて呟く声がして、私は。
思わず笑ってしまった。
抑えきれない声にトントンが振り向いて不満そうな顔を浮かべるのも構わずに笑い続けてしまう。おい、と声を掛けられてやっと少しだけ笑いが収まった。
「それは笑いすぎやと思うぞ…」
「ご、めんね、…ふふ、」
「ほんま格好つかんわ、俺」
でも。助けてくれたトントンはすごくカッコよかったよ。
ぽつりと呟いた声をちゃっかりトントンは拾い上げていたようで、え、と固まっている。
本当は告白された時点で返事なんて決まっているのだけど、
「それじゃあ、お友達から始めませんか」
友達期間を経て恋人になるのも悪くないかも、なんて。
「す」から始まり「き」で終わる二文字 / rbr *request→←*
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ももね(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!喜んでくださったようでうれしく思います。私自身も「お友達から始めませんか、」は特にお気に入りのお話でしたので続編を書くのはとても楽しかったです!この度はリクエストありがとうございました! (2020年5月14日 22時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - ももねさん» ももね様!リク消化ありがとうございます!もう好きすぎて言葉に表せないくらい好きです!ももね様!本当にありがとうございました!愛してます! (2020年5月13日 22時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
ももね(プロフ) - 天真爛漫さん» ありがとうございます!天真爛漫さまのご希望に添えたなら幸いです。今後ともよろしくお願いします! (2020年5月8日 10時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
天真爛漫 - 作者様、素敵な作品を書くてくださり、ありがとうございました!! (2020年5月6日 21時) (レス) id: 545c0410b5 (このIDを非表示/違反報告)
ももね(プロフ) - りんごさん» はじめまして!コメントありがとうございます。ありがとうございます…!好きなフレーズを題名にさせてもらいました!^^リクエスト承りました!執筆が完了次第投稿させていただきます。よろしくお願いします! (2020年5月3日 23時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももね | 作成日時:2020年4月13日 19時