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「大事にしてたお守りを、ね。無くしちゃったの」
「ほぉん…」
「会社に着いた時にはあったから、たぶん何処かで落としたんだけど」
正直に指輪と言ってしまうのはどうしても気恥ずかしくて。お守りという言葉でぼかす。嘘は言ってない、はずだから大丈夫。「どんなのなん?」と聞かれたので、お守り袋の特徴を思い出しながら説明してみるも、
「うーん、見かけてへんなぁ」
「…そっか」
もしかしたらと思っていた手前、コネシマに答えた声は自分で聞いてても沈んでいた。大して役に立たんで悪いと謝るコネシマに大丈夫だと笑って見せる。大丈夫じゃないけど。
しかしコネシマは、黙って私を見つめた後。腕の伸ばしてぽん、と頭を撫でた。
「え」
「この後も探すんやろ?」
「う、ん」
「しゃあないから手伝ったるわ!」
「でも、仕事は?」
「俺、仕事終わっててん。後は普通に家に帰るだけやったから暇なんや」
でも、と言いどもる私に気にすんなとコネシマが笑いかけてくれるものだから。今日一日の精神的疲労を顧みて、少しだけお言葉に甘えるのもいいかもしれないと思った。
「じゃあ。…よろしくお願いします」
「おん、任せとき!」
立ち上がり照明を背にして自信満々に歯を覗かせて笑う姿が、少し眩しかった。
*
「ないなぁ」
「ないねぇ」
会社の中を隅から隅まで探してもう少しで一時間が経つのにも関わらず、お守り袋は見つからなかった。舞い戻って休憩室の中、今度は二人並んで座りながら項垂れる。
腕時計を見てみれば、時計の針はもう直ぐで19時になることを示していた。時間切れかもしれないと隣のコネシマを見遣る。進んで協力を申し出てくれたけれど、これ以上振り回すのも申し訳ないのではと感じ始めてしまったのだ。
「他に探しとらんところは、」
「コネシマ」
「おぉ?」
腰を上げて再び捜索を始めようとする腕を引っ張って引き留める。再び座りなおしたコネシマは、目を大きく広げてきょとんとした顔をしていた。
もう良いよ、付き合ってくれてありがとうと伝えると怪訝そうに眉を寄せる。
「まだ見つかっとらんやんけ」
「でも時間遅いし、あとは一人で探すから大丈夫」
「はぁ?」
「それに、ほら。…最悪捨てられちゃってるかもしれない、し」
何故か苛立っているコネシマにへらりと笑いかける。うまく笑えてるかな。でも、捨てられてるかもという可能性を一番に怖がっているのは私だからかなぁ、
語尾は少し震えていた。
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ももね(プロフ) - りんごさん» ありがとうございます!喜んでくださったようでうれしく思います。私自身も「お友達から始めませんか、」は特にお気に入りのお話でしたので続編を書くのはとても楽しかったです!この度はリクエストありがとうございました! (2020年5月14日 22時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
りんご - ももねさん» ももね様!リク消化ありがとうございます!もう好きすぎて言葉に表せないくらい好きです!ももね様!本当にありがとうございました!愛してます! (2020年5月13日 22時) (レス) id: ed57538bc3 (このIDを非表示/違反報告)
ももね(プロフ) - 天真爛漫さん» ありがとうございます!天真爛漫さまのご希望に添えたなら幸いです。今後ともよろしくお願いします! (2020年5月8日 10時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
天真爛漫 - 作者様、素敵な作品を書くてくださり、ありがとうございました!! (2020年5月6日 21時) (レス) id: 545c0410b5 (このIDを非表示/違反報告)
ももね(プロフ) - りんごさん» はじめまして!コメントありがとうございます。ありがとうございます…!好きなフレーズを題名にさせてもらいました!^^リクエスト承りました!執筆が完了次第投稿させていただきます。よろしくお願いします! (2020年5月3日 23時) (レス) id: 2fa0c60296 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ももね | 作成日時:2020年4月13日 19時