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252 game ページ13

【 稲荷崎 side 】


「……なんやもう23点かいな。早すぎやんな。」
「Aくん、本気にさせたらこんなん当たり前やで。あの人NYでサーブだけで1セット取った伝説持ってるんやぞ。」
「はぁ!?半端ないなあ、ホンマ。俺やったらコントロールもそうやけど、まず体力持たへんし。」
「お前と一緒にすんなっ、お前とAくんじゃ天と地程ちゃうっつーねん!」

生き生きとした表情で跳ぶAくんを見つめながら、侑はいてもたってもいられない感情を抱いていた。相手が弱すぎる……普段のAくんだったらやる気をなくしていてもおかしくない状況のはずが、今は代表戦の時よりも輝いた目をしている。それはきっとあの“青葉城西”にいるから。それは分かっているのだが、許せない自分がいた。あの人にボールを届ける権利があるのは死に物狂いの努力と練習を重ね、許されるすべての時間をバレーに捧げた者___侑はAに会い、トスを上げた瞬間、それらは全てこの時にためにあったと確信した。それなのに、だ。その俺よりもAくんを高く跳ばした及川くんが気になって仕方ない。何でそんなことが出来るのか、二人のやりとりをじっと見つめながら考えを巡らせた。
Aくんは他のスパイカー達に比べて踏み込みから最高到達点に至るまでの時間が物凄く短く、またバランス感覚の良さも兼ね備えているため空中での滞空時間も長い。その上打点も高いとなると実はセッティングが難しい選手なのである。ある程度のトスの乱れはAくんの技術の高さでカバーしてくれるが、彼に本気のスパイクを打たせるにはドンピシャと言えるほど、タイミングと高さの合ったトスが必要なのだ。侑も始めの内は何度か「もっと速く」や「もっと高く」と言われた身であったが、今はベストなセッティングが出来るようになった。Aくんに本気スパイクを打たせられる及川くんのセットアップは技術だけで言えば自分の方が上に見える。では、何故、"違う"のか。

「……なぁ、ツム。お前、Aくんのスパイク、止められんのんか?」

思考をぐるぐると巡らせていると、隣にいた治が呟く。うっかり選抜代表のセッターのつもりで考えていたが、この目の前でとんでもない試合展開を繰り広げているAくんは次の試合の対戦相手なのだ。視点を変えねば、と侑は頭を振る。治の言葉に返事を返すと、その後は二人でAくん攻略法について議論を重ねたのだった。


___I want to solve a mystery.

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狼派(プロフ) - 続き楽しみにしてますうううううううううう!頑張ってください!神作をありがとうございます! (7月22日 21時) (レス) @page26 id: 7687561dfd (このIDを非表示/違反報告)
あいうえお - あぁぁぁぁ、めっちゃ気になるやん!続き、楽しみに待ってますわ。応援しとります。頑張ってくなはれ! (2022年9月18日 16時) (レス) @page26 id: 257f098b04 (このIDを非表示/違反報告)
雪マカロン(プロフ) - 更新ありがとうございます! (2022年3月27日 21時) (レス) @page24 id: c9091179e7 (このIDを非表示/違反報告)
- 続きが楽しみです 頑張って下さい (2022年3月10日 13時) (レス) id: 5ca45dddad (このIDを非表示/違反報告)
山さん - ヒェ…………ついに稲荷崎戦来ましたね……ヒィィィィ……銀鏡くんがカッコよすぎる……稲荷崎推しだからスゲェ嬉しい……更新待ってます← (2021年9月24日 2時) (レス) @page23 id: a9954d5378 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:haroki | 作成日時:2020年3月16日 2時

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