218 game ページ9
不機嫌さを露にする男＿＿佐久早聖臣(サクサキヨオミ)が俺の言葉に小さく舌打ちをする。
「……若利くんから聞きました。日本に帰ってきてたのも、東京に合宿に来てたのも。全部、アンタからじゃなくて、若利くんから。」
「あー……うん、俺が悪かったよな。スマン。」
「はぁ！？何が"スマン"だよっ絶対そう思ってないじゃん。振り回されるこっちの気も知らないくせに。」
徐々にボルテージが上がりつつある佐久早には俺が何を言おうと火に油を注ぐだけらしい。コイツの怒りの理由は牛島と同じ理由なのだが、牛島との違いはその出し方が大変面倒ということだ。
内心ため息を漏らすが、ここはとことん向き合ってやらない限り、この場に終わりは訪れないため、腹を括った俺は真っ正面から佐久早を見つめ返した。
「………ごめん。」
「っ……何ソレ。………何でいっつも後回しにすんだよ。……俺がアンタに……Aさんにどれ程憧れてるか分かってんでしょ？……NYに行っちゃったから選抜だけでもって、諦めたのに……どうして帰ってきたんだよ。しかも何？青葉城西とか知らない学校に入ってるわけ？……意味わかんない。」
ぶつぶつと呟かれる不満は、きっと佐久早の中に渦巻いていた不安。ぼろぼろとこぼれ落ちては佐久早の顔を歪ませていく。
選抜代表で初めて会った時から強く憧れの思いを、好敵手として向けられる強い視線を、いつもいつもコイツからは感じさせられる。
返す言葉もないまま黙り込んでいると、佐久早の腕が伸びてきて、俺の胸ぐらを掴んだ。
「聖＿＿っ」
「あーっもうっ！！何で井闥山に来てくれなかったんだよ！！もっと近くでAさんのプレーを見せさせろよっ！！俺にっ！！」
眼前にある佐久早の瞳が揺れる。痛々しいくらいの強い思いをぶつけてくる佐久早の頭をそっと撫でる。すると、一瞬見開かれた瞳はすぐに足元へと視線を下げた。
「………ゴメン。でも、俺、全国決めたから……お前とマッチアップするために。ネットの向こうから俺はお前と向き合いたいんだ。」
「＿＿＿っ！」
胸ぐらを掴んでいた掌が力を失いだらりと垂れる。地に落ちては広がる水滴は月の明かりを反射し、きらりと光る。
「…………本当にズルい人だよ、アンタは……。でも、やっぱり、最高にカッケェ……。Aさん、今日会いに来て良かったです。」
涙でぐしゃぐしゃになった笑顔。俺は佐久早を思い切り抱き締め、小さく「ありがとう」と伝えた。
＿＿Oath of reunion.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 1434人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「男主」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
雪マカロン - 好みにドンピシャにあってて凄く面白いです。1から7まで7週くらいするほど大好きです。続きまってます！ (2020年3月14日 7時) (
レス) id: 294dc32197 (このIDを非表示/違反報告)
あゆ - すっごく面白かったです続きが気になるので無理のない程度で更新して下さると嬉しいです(*^^*) (2020年3月10日 23時) (レス) id: 61bf71a8cd (このIDを非表示/違反報告)
めあ - すっごい面白いです!!この作品大好きすぎます！更新待ってます!! (2019年11月30日 7時) (レス) id: 0ac1360618 (このIDを非表示/違反報告)
ナチ(プロフ) - 内容がヤバイ位ドンビシャです。応援してます♪ (2019年4月17日 18時) (レス) id: 1fe5fa25a0 (このIDを非表示/違反報告)
こと - 作品めっちゃおもしろいです！更新楽しみです (2019年3月23日 8時) (レス) id: ecf82d82cf (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：haroki | 作成日時：2015年9月24日 22時
