【るろうに剣心】ある優しい人斬りのお話。 (ページ47)

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四十五剣心side ページ47

夏らしい綺麗な星空が見える夜。

立ち上がり、胸いっぱいに森の空気を吸い込む。

隣ではもうすでにAがすやすやと寝息を立てて眠っていた。

起こさないよう、細心の注意を払いながら小川の川岸へと降りていった。

(あれからもう十年以上も経ったのか。)

あの日、Aと離れ離れになった日。

辛くて仕方がなかった。

いっそ自分も死んでしまおうかと、そう思っていた。

しかし、

【必ず生きて！】

Aの言葉を思い出し、何とか死なないで生きてきた。

そして、十年後。再びAに会えた。

奇跡だと思った。幻じゃないかとも思った。

嬉しすぎて何も言えなかった。

愛しいAが何も変わりなくて。
俺なんかに寄り添ってくれる、と小さく、けれどもはっきり頷いてくれたAがいることが。

そして今、こうして2人で旅をしている。

そのことが幸せ過ぎて怖くなる。

俺はこんなに幸せでいいのか。

『剣心…』

眠そうな目をこすりながらAが俺の名を呼ぶ。

剣心「Aっ！…すまん起こしたな。」

『いいよ。…今宵は月が綺麗ね。』

空を見上げると見事な満月だった。

上を向くAの横顔が何処か儚げでドキッとする

剣心「本当でござるな。」

『剣心、ここってさ昔も2人で来たよね。』

剣心「…そうか。昔も来たんだったな。道理で見覚えのある景色なわけだ。」

『…剣心が生きててくれてよかった。』

剣心「え？」

『だって剣心、新時代の終わりと共に死ぬと思ったもの。』

剣心「そんな事、考えた事もあったが今は無いよ。…Aがいるから。」

『ふふっ…言ってくれると思った。』

Aが柔らかく微笑んだ。