◆続き ページ9
「ぅ……あ、奥菜、さん？」
そんなことを考えていると千代が薄っすらと目を開け、こちらを見た。
「千代っ、目が覚めたか」
「私、崖から落ちて……、奥菜さんも……」
そこではっとして千代は両手で顔を覆う。
「私のっ、せいで！」
くぐもった声とともに、手の隙間から涙が溢れる。俺は傷つけないようにそれを親指で拭う。
「気にするな」
「でもっ」
「恋人を助けるのは当然だろ？」
「っぅ、あり、がとう」
千代は俺に抱きつくとわんわん泣き出した。俺は泣くな泣くな、と子どもをあやすように背をぽんぽんと叩いてやる。その時、何か柔らかいフサフサとしたものが手に当たる。なんだと思いそこに目をやる。千代も何か違和感があったのか涙を手で拭いながら自分の背中の方を見る。
「お、おい、これって」
「わ、私……」
ちょうど腰のあたりだろうか、白い翼が千代の体からワサワサと生えていた。血の気が引いていく音が聞こえそうなくらい心臓が冷たくなる。
「天使、になったのかしら……」
千代の引き攣った声。
「や、やっぱり俺ら」
死んで、と言いかけたところで千代に口を封じられる。
「死んだなんて言わないで！」
「まだ言ってないだろっ！ むしろお前が言ってるだろうが！」
「と、とにかくまだ死んだってわからないでしょう！？」
「どっからどうみても天使の羽だろ、これ！？」
「でも奥菜さんの背中には──」
結局、アリスと名乗る人形が現れてこの世界の説明をするまで、俺達はこんなアホみたいな言い争いをしていた。
はじまり 完
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ツナマヨガチ勢(プロフ) - 玻璃さん» 見るのが遅れてしまってすみません！ ジルコニアを描いてくださりありがとうございます！ 光の速さで保存させていただきました……(昇天) (2019年9月7日 21時) (
レス) id: c3217907b1 (このIDを非表示/違反報告)
メロンパンのメロンパン(プロフ) - 玻璃さん» ありがとうございます〜！ (2019年9月1日 21時) (レス) id: 41ddeedce9 (このIDを非表示/違反報告)
玻璃(プロフ) - メロンパンのメロンパンさん» ありがとうございます！更新がんばります＾＾是非描かせてください！時間ができたら描かせていただきます！ (2019年9月1日 21時) (レス) id: 85136437a2 (このIDを非表示/違反報告)
メロンパンのメロンパン(プロフ) - ものすごく素敵です！更新頑張ってください！それからもしよろしければ、うちの子の誰かをかいていただけないでしょうか？ (2019年9月1日 20時) (レス) id: 41ddeedce9 (このIDを非表示/違反報告)
リンゴ - 玻璃さん» 可愛く書いてくださりありがとうございます！m(_ _)mぜひ、使ってください！ (2019年9月1日 16時) (レス) id: 3588ccbe80 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：玻璃 | 作者ホームページ：https://plus.fm-p.jp/u/hari93
作成日時：2019年8月23日 1時
