Live positively (ページ38)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:72,548 hit

俺とあいつ黄ページ38

黄side

Aが好き。

この気持ちに気付いたんはデビュー間近の頃、
やからこそ一緒におりたかったし、
やからこそ一緒にデビューしたかった。

Aの柔らかそうな長い髪をいつも目で追った。

その華奢な体を抱きしめてみたいと思うた。

手を伸ばせばすぐ触れられる位置におったんに、
それが出来なかった。

Aの伏し目がちな瞳に俺がうつるようにめっちゃ話しかけた。

笑った顔が見たくて、俺もいつでも笑顔でおった。

Aのアメリカ留学の話を聞いた時、俺にはどうすることも出来んで、引き止める言葉もなかった。
『一緒にデビューしようや。』って馬鹿の一つ覚えみたいに繰り返してただけ。

おらんくなって、めっちゃ後悔した。

なんでもっと引き止めなかったんやって。

やけどAの方は連絡ひとつよこさへんかった。

Aが好き、やった。

好き『やった』

…おん、過去の話、

のはずやのに、

忘れていたあの頃のくすぶりを再燃させたのは廣瀬。

廣瀬A。

そっか、お前もAなんや。

『A』

まぁどこにでもある中性的な名前やもんな。

やから、お前のことも気になるんやろうか。

Aと、廣瀬。

違う人間のはずなんに、なつかしさを感じる。

…めっちゃ変な奴なんに気になる。

「錦戸さん？」

廣瀬の声にハッとした。

「あ、…考え事しとった。」

「ははっ。僕、戻りますね。」

微笑んでそう言った廣瀬の手首を咄嗟に掴んだ。

目を丸くしてこちらを見つめる。

「…廣瀬って、好きな奴おるん？」

何も考えず引き止めてもうて、
しかも変なことを聞いてもうたと後悔した。

やけど廣瀬は俺の言葉に微笑んで言った。

「みなさんが好きです。」

一言一句予想通りの返答。

「…likeじゃなくてloveでや、あほ。」

「みなさんloveです。」

またもや即答の笑顔なこいつ。

(…ほんまあほなんちゃうか。)

「…なら、」

そう言ってさらに強く廣瀬を引っ張った。

勢いで座っとる俺に覆いかぶさる廣瀬。

「俺とキスできるか？」

俺の言葉に廣瀬は迷うことなく触れるだけのキスをした。

拍子抜けしたんは俺の方。

絶対せえへんと思うた。

迷う顔が見れると思うた。

…やのに、

硬直した俺から離れた廣瀬は、満足気に鼻歌を歌いながら楽屋に戻ってった。