エイトの籠の鳥3 (ページ21)

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けれど、

今は違う。

この想い、

届かなくても、

私は、

私は彼らが…

「…ごめん、なさい。」

私の一言に、彼の瞳が曇ったのがわかった。

「そっか。

…コレ、彼氏の？」

視線の先は彼の隣の椅子に置かれた先程の紙袋。

「…ううん。

けど、大切な人の頼まれモノなの。」

「…彼氏、じゃないんだ？」

痛いトコを突く彼に、目を逸らしてしまった。

「…悪ぃ。

余計なこと聞いたな。」

「…ううん。」

それ以上彼は口を開かなくて、
私はテーブルの上に置かれた冷めていくコーヒーをながめていた。

ガタッ

「…出るか。」

お互い黙ったまま時間が過ぎ、
そう言った彼の言葉に慌てて席を立った。

「引き止めた上に変なこと言ってごめんな。

コレ、早く渡さなきゃだったんだろ？」

目の前に差し出された紙袋。

「…うん。」

手を伸ばしそっと受け取ると、
私の身体を彼が包んだ。

「…智樹？」

「…ごめん。

…少しだけ、

少しだけだから。」

頭の上で聞こえる声は穏やかで優しくて、

懐かしい匂いのする彼の腕の中で、

私は目を閉じた。

「…A‼」

刹那、背中に聞こえた私を呼ぶ声。

振り返らなくてもわかる。

…この声は、

この声はあの人の、